10月の七十二候|寒露・霜降に巡る6つの候の意味と2026年の日付

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金木犀の香りが流れ、朝の空気にひやりとした手ざわりが混じりはじめる10月。カレンダーには「寒露」「霜降」という文字が並びますが、その下にもっと細かい季節の区切りがあることをご存じでしょうか。それが、1年を72に分けた「七十二候(しちじゅうにこう)」です。

この記事では、2026年10月に巡る6つの候について、正しい読み方・意味・その年の日付を一覧表と解説でまとめました。あわせて、10月の終わりから11月初旬にかけて秋を締めくくる候や、時候の挨拶・旬の食材といった暮らしへの取り入れ方も紹介します。

先に要点です。2026年10月は、10月3日の「水始涸」から10月28日の「霎時施」まで、約5日ごとに6つの候が移り変わります。中心になるのは寒露(10月8日)と霜降(10月23日)の2つの節気です。

目次

10月の七十二候とは|秋分の終わりから霜降までを巡る

10月の七十二候は、秋分の最後の候から始まり、寒露・霜降という2つの節気を通って、立冬の直前までを流れていきます。稲刈りの支度、雁の渡り、菊の開花、虫の声、初霜、そして通り雨。並べてみると、実りの季節がしまわれて冬支度へ移っていく順序が、そのまま言葉になっていることがわかります。

そもそも七十二候とは

七十二候は、二十四節気のひとつひとつをさらに3つに分けた暦です。24×3で72になるため、この名がついています。1つの候はおよそ5日間。「初候(しょこう)」「次候(じこう)」「末候(まっこう)」の順に移り変わり、5日ごとに季節の名前が変わっていく仕組みです。

もとは古代中国で生まれた暦ですが、中国の気候をもとにした表現は日本の風土と合わない部分がありました。そのため江戸時代に日本の自然に合わせた改訂が重ねられ、現在よく目にするものは明治7年(1874年)の「略本暦(りゃくほんれき)」に載った名称がもとになっています。動植物や気象の変化を3〜5文字の短い文で言い切るのが特徴で、いわば季節の観測記録が名前になった暦といえます。

七十二候の名称は改訂の歴史があるため、資料によって表記や読み方が異なる場合があります。この記事では略本暦にもとづく一般的な表記を用いています。

10月は6つの候が移り変わる

2026年の10月には、6つの候が始まります。内訳は、秋分の末候がひとつ、寒露の3候、霜降の初候と次候です。霜降の末候「楓蔦黄」だけは11月2日ごろからになるため、10月の暦をめくっているうちには顔を出しません。ただし秋を締めくくる候なので、この記事でも最後に触れておきます。

節気そのものの意味や、寒露・霜降が年によって前後する理由については、別記事で詳しく整理しています。

10月の七十二候 一覧表【2026年の日付つき】

2026年10月に始まる6つの候を、読み方・属する節気・期間とあわせて一覧にしました。日付は国立天文台が発表する暦要項にもとづく2026年の節気日から算出したもので、年によって1日前後します。

読み方属する節気2026年の期間
水始涸みずはじめてかる秋分・末候10月3日〜10月7日ごろ
鴻雁来こうがんきたる寒露・初候10月8日〜10月12日ごろ
菊花開きくのはなひらく寒露・次候10月13日〜10月17日ごろ
蟋蟀在戸きりぎりすとにあり寒露・末候10月18日〜10月22日ごろ
霜始降しもはじめてふる霜降・初候10月23日〜10月27日ごろ
霎時施こさめときどきふる霜降・次候10月28日〜11月1日ごろ

この6つに続く霜降の末候「楓蔦黄(もみじつたきばむ)」は、2026年は11月2日ごろから11月6日ごろまで。翌11月7日の立冬で、暦の上の秋が終わります。

秋分・寒露の候|10月3日〜10月22日ごろ

10月前半は、田んぼの支度から始まり、渡り鳥・花・虫の声へと関心が移っていきます。空を見上げ、庭先に目をやり、夜には耳を澄ます。対象がだんだん人の暮らしの近くへ寄ってくるのが、この4つの候を並べたときの流れです。

末候 水始涸(みずはじめてかる)

秋分の最後の候で、2026年は10月3日ごろから7日ごろまで。田んぼの水が干上がるころ、という意味です。ただしこの「涸れる」は、日照りで自然に干上がることではありません。稲刈りに備えて、農家が意図的に田の水を抜く「落水(らくすい)」の作業をさしています。

水を落とすと地面が固まり、機械が入れるようになります。稲の実りを止めて刈り取りに向かわせる、収穫前の最後の一手です。名前だけ読むと寂しげな候ですが、実際には稲刈りの直前にあたる、1年でもっとも張りつめた時期を表しています。

初候 鴻雁来(こうがんきたる)

寒露の始まりとともに巡ってくる候で、2026年は10月8日ごろから12日ごろまで。北から雁(がん・かり)が渡ってくるころを表します。「鴻」は大形の雁、「雁」は小形の雁をさすとされ、大小の雁がそろって空を渡ってくる情景です。

この候には対になる候があります。春の清明・次候「鴻雁北(こうがんかえる)」で、こちらは雁が北へ帰っていくころ。秋に来て春に帰る、という往復が七十二候のなかできちんと対応づけられているわけです。同じ構図は燕にもあり、白露の末候「玄鳥去(つばめさる)」と清明の初候「玄鳥至(つばめきたる)」が対をなしています。

日本に渡ってくる雁のうち、もっとも数が多いのはマガンです。宮城県の伊豆沼・内沼や島根県の宍道湖などが有名な飛来地として知られ、10月ごろから群れが姿を見せはじめます。

次候 菊花開(きくのはなひらく)

2026年は10月13日ごろから17日ごろまで。その名のとおり、菊の花が咲きはじめるころです。各地で菊花展や菊人形展が開かれるのもこの時期で、七十二候のなかでは数少ない「花そのもの」を主役にした候にあたります。

菊が10月の候になっているのは、旧暦との関係で読むとすっきりします。菊を愛でる行事である重陽の節句は9月9日ですが、これはもともと旧暦の日付でした。旧暦9月9日を新暦に直すと年によって10月中旬から下旬あたりになり、ちょうどこの候に重なります。つまり新暦9月9日に菊がまだ咲きそろわないのは当然で、本来の菊の季節はこちらだった、というわけです。

ちなみに2026年の旧暦9月9日は10月19日にあたり、次の「蟋蟀在戸」の期間に入ります。年によってどの候に重なるかは変わりますが、いずれにせよ10月中旬から下旬というのが、菊のいちばん美しい時期です。

菊花展に並ぶ大輪の菊。日の傾いた午後の光、写真風・落ち着いたトーン

末候 蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)

寒露の最後の候で、2026年は10月18日ごろから22日ごろまで。秋の虫が家の戸口で鳴くころ、という意味です。夏の終わりには野原の遠くで鳴いていた虫の声が、寒さに追われて人家のそばまで寄ってくる。その距離の変化を、そのまま候の名前にしています。

読み方でとまどいやすいのがこの候です。「蟋蟀」という漢字は現代ではコオロギを指しますが、七十二候では「きりぎりす」と読ませます。これは古語の「きりぎりす」がコオロギの古名だったためで、現在のキリギリスとは別の虫をさしていたと考えられています。資料によっては「しっしゅつとにあり」と音読みする例もあります。

霜降の候|10月23日〜11月上旬

10月23日の霜降からは、季節の主役が「秋の実り」から「冬の気配」へ入れ替わります。霜、通り雨、色づく葉。3つの候はいずれも、冬がすぐそこまで来ていることを別々の角度から告げる言葉になっています。

初候 霜始降(しもはじめてふる)

2026年は10月23日ごろから27日ごろまで。霜が初めて降りるころを表します。霜は、地表付近の温度が0度近くまで下がったときに空気中の水蒸気が氷の結晶になったもので、よく晴れて風のない朝に降りやすいという特徴があります。

とはいえ、10月下旬に霜が降りる地域は限られます。気象庁の平年値(1991〜2020年)でも、初霜の平年日は札幌が10月下旬ごろ、仙台が11月上旬ごろ、東京が12月中旬ごろと大きな幅があります。七十二候はもともと京都あたりの気候を基準に整えられた暦なので、地域によっては1〜2か月早い予告として受け取るのが実情に合っています。

霜が降りると農作物が傷むため、この時期は「霜注意報」が出ることがあります。家庭菜園やベランダの鉢植えがある場合、この候のあたりから朝の冷え込み予報に目を向けておくと安心です。

次候 霎時施(こさめときどきふる)

2026年は10月28日ごろから11月1日ごろまで。小雨が降ったりやんだりするころ、という意味です。「霎」は通り雨・にわか雨を表す漢字で、しとしと続く雨ではなく、さっと降ってすぐ上がる雨をさしています。

この降り方は、冬の季語である「時雨(しぐれ)」そのものです。晩秋から初冬にかけて、山を越えてきた雲が短時間だけ雨を落としていく現象で、京都をはじめとする盆地でとくによく見られます。まだ暦の上では秋ですが、雨の性質はすでに冬のものへ移りはじめている——それを言い当てた候といえます。

末候 楓蔦黄(もみじつたきばむ)※11月初旬

2026年は11月2日ごろから6日ごろまでで、10月内には入りません。楓(もみじ)や蔦の葉が色づくころを表し、七十二候のうち秋の最後を締めくくる候にあたります。翌11月7日が立冬です。

注目したいのは「黄ばむ」という言い方です。紅葉というと真っ赤な楓を思い浮かべますが、葉の色づきはまず緑が抜けて黄色みを帯びるところから始まります。赤くなる前の、その最初の段階を捉えているのがこの候の名前です。実際の紅葉の見ごろは、京都あたりでは11月下旬。ここでも暦は、現象そのものよりやや早く名前をつけています。

10月の七十二候を暮らしに取り入れるヒント

七十二候は覚えるための知識というより、季節に目を向けるための手がかりです。5日ごとに名前が変わるので、「いまはどの候だろう」と確かめるだけで、見過ごしていた変化に気づきやすくなります。手紙と食卓は、そのとっかかりにしやすい2つの場面です。

時候の挨拶・手紙に使う

手紙の書き出しには「寒露の候」「霜降の候」という定型がありますが、候の名前そのものを言葉として借りると、ぐっと具体的になります。たとえば10月中旬なら「菊の花がほころびはじめました」、下旬なら「朝の冷え込みに霜の気配を感じるころとなりました」といった調子です。

10月の書き出し例(時期別)

上旬:稲刈りの便りが届く季節となりました。/秋冷の候、いかがお過ごしでしょうか。

中旬:雁の渡る空に、秋の深まりを感じます。/菊薫るころとなりました。

下旬:朝夕の冷え込みが増してまいりました。/木々の色づきが日ごとに進んでおります。

ビジネス文書のように形式が重んじられる場面では従来どおり「寒露の候」を使い、親しい相手への手紙では候の名前を自分の言葉にほどく。この使い分けにしておくと、どちらの場面でも収まりがよくなります。

旬の食材・季節の風物を楽しむ

「水始涸」が稲刈りの支度を表していたとおり、10月は新米が出そろう月です。あわせて、栗・さつまいも・里芋・舞茸といった土の恵み、柿・りんご・ぶどうといった果物、戻りがつお・鮭・さんまなどの魚が食卓に並びます。候の名前を意識しながら買い物をすると、旬のものが自然と目に入るようになります。

行事では、2026年は10月23日が十三夜(後の月)にあたります。この年は霜降と同じ日で、栗や豆を供えることから「栗名月」「豆名月」とも呼ばれる月見です。「霜始降」の初日に月を見上げる、という組み合わせになる年ということになります。

ほかにも10月には衣替え(10月1日)、スポーツの日、ハロウィンといった行事が続きます。候の移り変わりとあわせて眺めると、月の後半へ進むほど冬支度の色が濃くなっていくのがよくわかります。

10月の七十二候に関するよくある質問

10月の七十二候はいくつありますか?

2026年の場合、10月中に始まる候は6つです。秋分の末候「水始涸」、寒露の3候「鴻雁来」「菊花開」「蟋蟀在戸」、霜降の初候「霜始降」と次候「霎時施」という内訳になります。霜降の末候「楓蔦黄」は11月2日ごろからで、10月には入りません。

七十二候の日付は毎年同じですか?

年によって1日ほど前後します。七十二候の区切りは、もとになる二十四節気の日付から決まる仕組みで、その節気の日付は太陽の位置で決まるためです。1年が365日ちょうどではないぶんのずれが積み重なり、うるう年で調整されることで、寒露や霜降の日付が年ごとに動きます。2026年は寒露が10月8日、霜降が10月23日です。

「蟋蟀在戸」はコオロギとキリギリスのどちらですか?

コオロギをさすと考えられています。「蟋蟀」という漢字は現代の日本語ではコオロギを指しますが、七十二候では「きりぎりす」と読ませます。これは古語の「きりぎりす」がコオロギの古名だったためで、現在キリギリスと呼ばれている虫とは別のものです。呼び名が入れ替わった経緯があるので、読みと実物がねじれて見えるわけです。

「霜始降」の時期に霜が降りないのですが、おかしいですか?

おかしくありません。七十二候はもともと京都周辺の気候を基準に整えられた暦で、地域差が織り込まれていないためです。気象庁の平年値(1991〜2020年)でも初霜は札幌が10月下旬ごろ、仙台が11月上旬ごろ、東京が12月中旬ごろと大きく開きます。実際の初霜より早めに名前がつく候だと考えておくとよいでしょう。

二十四節気と七十二候は何が違いますか?

細かさが違います。二十四節気は1年を24に分けたもので、1つあたり約15日。七十二候はそれをさらに3等分したもので、1つあたり約5日です。立春・夏至・寒露といった名前は二十四節気、「鴻雁来」「菊花開」のような短い文の名前が七十二候にあたります。節気が季節の大きな区切りを示し、候がその中身を描写する、という関係です。

まとめ|10月の七十二候で秋の深まりを味わう

2026年10月に巡る候は、10月3日の「水始涸」に始まり、寒露の「鴻雁来」「菊花開」「蟋蟀在戸」、霜降の「霜始降」「霎時施」と続く6つでした。田の水を落とし、雁を迎え、菊を愛で、虫の声を聞き、霜と通り雨に冬を予感する。5日ごとの名前を追うだけで、10月という月の輪郭がはっきりしてきます。

いずれの候も、実際の気象より少し早めに名前がつくのが特徴です。霜がまだ降りなくても、紅葉がまだ緑でも、それは暦がずれているのではなく、これから起こることを先に告げる暦だからだと考えると腑に落ちます。

10月の候をひとつ覚えるなら、いま自分がいる候を確かめるところから。名前がわかると、いつもの通勤路の木や、夕方の虫の声が、少しだけ違って見えてきます。

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