梅雨入りが近づき、紫陽花が色づき、夜には蛍が舞いはじめる──6月は自然のうつろいが特に繊細な月です。そんな季節を、日本古来の暦「七十二候(しちじゅうにこう)」で巡ってみませんか。
七十二候は二十四節気をさらに3つに分け、約5日ごとに変わる季節の表情を切り取った暦です。6月は「芒種(ぼうしゅ)」と「夏至(げし)」の2つの節気にまたがり、合わせて6つの候で構成されます。
この記事を読めば、2026年6月の七十二候6つの日付・読み方・意味がひと目で分かり、暮らしに季節感を取り入れるヒントも持ち帰れます。
6月の七十二候とは|二十四節気「芒種・夏至」と6つの候
6月の七十二候は、芒種の3候と夏至の3候を合わせた合計6つの候からなります。それぞれが約5日間ずつ移り変わり、梅雨入り前後の自然の変化を細やかに映し出します。
七十二候は二十四節気をさらに3つに分けた暦
二十四節気は1年を24に分けて季節の節目を示す暦ですが、七十二候はそれをさらに「初候・次候・末候」の3つに細分化したものです。1つの候はおよそ5日間にあたります。
もともとは中国で生まれた暦ですが、日本の気候や動植物に合わせて何度か改訂が行われ、現在親しまれているのは江戸時代の暦学者・渋川春海らがまとめた「本朝七十二候」を改訂した形が中心です。

6月は芒種・夏至にまたがる6つの候で構成される
6月は前半が「芒種」、後半が「夏至」の時期です。芒種は稲などの穀物を植える頃、夏至は北半球で昼が最も長くなる日を含む節気を指します。
この2つの節気の中に、それぞれ3つずつの候があり、合計で6つの候が6月を彩ります。芒種は梅雨入り前後の湿った空気、夏至は植物の繁茂と陽の翳りを感じさせる時期にあたります。
2026年6月の七十二候カレンダー(一覧表)
2026年の6月から7月初旬にかけての七十二候を、節気とあわせて一覧にまとめました。
| 節気 | 候 | 読み方 | 2026年の期間 |
|---|---|---|---|
| 芒種 | 螳螂生 | かまきりしょうず | 6月6日〜10日ごろ |
| 腐草為蛍 | くされたるくさほたるとなる | 6月11日〜15日ごろ | |
| 梅子黄 | うめのみきなり | 6月16日〜20日ごろ | |
| 夏至 | 乃東枯 | なつかれくさかるる | 6月21日〜25日ごろ |
| 菖蒲華 | あやめはなさく | 6月26日〜7月1日ごろ | |
| 半夏生 | はんげしょうず | 7月2日〜6日ごろ |
候の名前は短い言葉に自然のドラマが凝縮されています。次の章から、それぞれの候の意味と季節の表情を順番に見ていきましょう。

芒種の七十二候|6月6日〜20日ごろの3候
芒種は「芒(のぎ)」のある穀物の種をまく時期という意味で、稲作の節目にあたります。気温と湿度が上がり、生き物たちの動きが一気に活発になる頃です。
螳螂生(かまきりしょうず)|6月6日〜10日ごろ
「螳螂生」は、秋に産み付けられた卵から子カマキリが姿を現す頃を表します。小さな体ですでに鎌をもち、夏に向けて狩りをはじめる姿は、たくましさと愛らしさが同居する初夏の風景です。
庭やベランダの植木鉢のそばで見かけることもあり、子どもと一緒に観察すると季節の発見につながります。卵のうから一度に数十匹の幼虫が出てくるため、生命の勢いをそのまま感じられる候です。
腐草為蛍(くされたるくさほたるとなる)|6月11日〜15日ごろ
蒸し暑い草むらの陰から蛍が舞い出る頃を表す候です。昔の人は腐った草が蛍に姿を変えると考えていたとされ、その想像力の豊かさが名前に残っています。
実際にはホタルの幼虫が水辺で育ち、初夏に羽化して光を放ちはじめます。ゲンジボタルは5月下旬から6月中旬、ヘイケボタルはもう少し遅れて見頃を迎えることが多く、地域によって時期に差があります。

蛍を見に行くなら、月明かりの少ない日の19時半〜21時ごろが狙い目です。風のない蒸し暑い夜ほど飛びやすいといわれます。
梅子黄(うめのみきなり)|6月16日〜20日ごろ
青々としていた梅の実が黄色く色づき、芳しい香りを漂わせる頃を指す候です。「梅雨(つゆ)」という言葉自体、この梅の実が熟す時期の雨にちなむという説があり、季節を象徴する候のひとつです。
この時期は梅仕事の本番でもあります。青梅は梅シロップや梅酒に、完熟梅は梅干しや梅ジャムに向くとされ、家庭ごとの楽しみ方が広がります。
青梅は爽やかな酸味でシロップや酒に、完熟梅は柔らかな果肉で梅干しに向きます。アクが気になる場合は数時間ほど水に浸してから仕込みはじめます。
夏至の七十二候|6月21日〜7月初旬の3候
夏至は北半球で昼が最も長くなる日を含む節気です。陽の力がピークを迎えると同時に、暦のうえではここから少しずつ昼が短くなりはじめる、折り返しの時期でもあります。
乃東枯(なつかれくさかるる)|6月21日〜25日ごろ
「乃東(ないとう)」は「夏枯草(なつかれくさ)」の古名で、薬草としても知られる「靫草(うつぼぐさ)」を指します。冬至の頃に芽を出し、夏至の頃に花穂が黒く枯れたように見えることから、この候の名がつきました。
他の草木が青々と繁る中、ひっそりと役目を終える植物に目を向ける──そんな対比の妙が感じられる候です。野原や公園の縁で、紫色の小花が残る穂を探してみるのも楽しみ方のひとつです。
菖蒲華(あやめはなさく)|6月26日〜7月1日ごろ
アヤメの花が咲く頃を表す候です。漢字では「菖蒲」と書きますが、ここでは端午の節句のショウブ(菖蒲湯のショウブ)ではなく、紫や白の花を咲かせるアヤメ科の植物を指すとされます。
カキツバタ・ハナショウブ・アヤメは混同されがちですが、咲く場所や花の付け根の模様で見分けられます。アヤメは乾いた草地、カキツバタとハナショウブは水辺や湿地を好む傾向があります。


半夏生(はんげしょうず)|7月2日〜6日ごろ
「半夏(はんげ)」と呼ばれる植物(カラスビシャク)が生え出す頃を指す候です。同じ名前で雑節の「半夏生」もあり、農家にとっては田植えを終える目安の日として古くから重視されてきました。
近畿地方ではこの日にタコを食べる風習が残る地域があり、稲がタコの足のようにしっかり大地に根づくようにとの願いが込められているとされます。地域ごとの食文化と結びついた候としても興味深いものです。
6月の七十二候を暮らしに取り入れるヒント
七十二候は単なる暦の知識にとどまらず、毎日の食卓や手紙、季節の遊びに取り入れることで一気に身近になります。難しく考えず、目に映る季節を候の言葉と重ねてみるのがおすすめです。
季節を感じる食材と料理
6月は梅・新ショウガ・らっきょう・初夏のスズキやアジなど、季節仕事と食卓の両方が動く月です。梅子黄の頃に梅シロップを仕込み、半夏生の頃にタコ料理を楽しむといった「候ごとのレシピ」を考えるのも一興です。
- 螳螂生〜腐草為蛍:新ショウガで甘酢漬け、らっきょう仕事
- 梅子黄:梅シロップ・梅酒・梅干しの仕込み
- 菖蒲華〜半夏生:タコ飯、初夏の白身魚の南蛮漬け
庭・ベランダで観察できる自然
カマキリの幼虫、紫陽花、ドクダミ、初夏に咲くクチナシ──6月の七十二候は、特別な場所に出かけなくても見つけられる自然の変化を教えてくれます。植物の名札と候の言葉を結びつけると、散歩がぐっと豊かになります。
雨の日でも、葉の上を転がる水滴やカタツムリの動きなど、観察できるものは意外と多いものです。傘をさしながらの「梅雨の季節観察」も、この時期ならではの楽しみ方です。
手紙・俳句で使える季語との関係
七十二候の名前そのものや、関連する自然現象は、6月の俳句や手紙の季語にも数多く取り入れられています。「梅雨」「蛍」「菖蒲」「半夏生」などは、いずれも夏の季語として古典・現代の両方で使われてきました。



季節の挨拶文を書くときに、候の名前をひと言添えるだけで、ぐっと味わい深い文章になります。




6月の七十二候に関するよくある質問
- 七十二候と二十四節気の違いは何ですか?
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二十四節気は1年を24に分けて季節の節目を示す暦で、立春・夏至・冬至などが含まれます。七十二候はそれぞれの節気をさらに3つに分けたもので、より細かな季節の移り変わりを表します。1つの候はおよそ5日間にあたります。
- 「半夏生」は6月ですか、それとも7月ですか?
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2026年の半夏生は7月2日からです。夏至の末候として、6月の七十二候の流れの最後に紹介されることが多いですが、暦のうえでは7月初旬に入ります。雑節としての半夏生も同じ日を指します。
- 七十二候の候の日付は毎年同じですか?
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二十四節気が太陽の動きに基づいて決まるため、七十二候の日付も年によって1日ほど前後することがあります。2026年と2027年では日付がずれることがあるため、最新の暦を確認するのが確実です。
- 七十二候の読み方が難しいのですが、覚えるコツはありますか?
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すべて暗記する必要はありません。候の名前を見たときに「何の動植物が登場しているか」「どんな季節の変化を表しているか」を意識すると、読み方も自然と頭に入りやすくなります。気に入った候から覚えていくのがおすすめです。
まとめ|6月の七十二候で梅雨どきの季節を丁寧に味わう
6月の七十二候は、芒種の「螳螂生・腐草為蛍・梅子黄」と夏至の「乃東枯・菖蒲華・半夏生」の合計6つで構成されます。それぞれが約5日間という短いサイクルで切り替わり、梅雨入り前後の繊細な季節の表情を映し出します。
カマキリの誕生、蛍の光、梅の実の色づき、アヤメの開花、半夏生のタコ料理──候の名前にはどれも、その時期にしか出会えない自然や暮らしの場面が込められています。
候の名前をひとつ覚えるだけで、いつもの6月が少し違って見えてきます。今日が何の候にあたるのか、暦をめくりながら毎日の季節を味わってみてください。



















