カレンダーで見かける「七十二候(しちじゅうにこう)」。8月になると、暦の上では夏から秋へと季節が移り変わっていきます。8月の七十二候には、涼しい風や夕暮れの虫の声など、秋の気配を感じさせる名前が並びます。
この記事では、8月の七十二候を立秋・処暑の節気ごとに整理し、それぞれの読み方・意味・2026年の日付をわかりやすく紹介します。2026年(令和8年)は8月7日が立秋、8月23日が処暑にあたり、この2つの日を起点に5つの候が入れ替わっていきます。

名前は難しそうだけど、意味がわかると毎日の風景が少し違って見えてきますよ。
8月の七十二候とは?立秋・処暑にまたがる暦
8月の七十二候は、二十四節気の「立秋」と「処暑」の2つの節気にまたがります。8月に巡る候は、立秋の3候と処暑の2候を合わせた5つが中心です。
七十二候は、二十四節気の1つをさらに約5日ずつ3つに分けた、日本の細やかな季節の暦です。1年を72に分けることで、わずかな自然の移り変わりを言葉にしています。それぞれの候には、風・虫・植物などの様子を表した短い名前が付けられています。
8月に始まる5つの候は、立春の初候から数えると第三十七候から第四十一候にあたります。1年を72に分けた暦のちょうど後半に入ったところで、名前に選ばれる題材も、夏の盛りを描くものから秋のきざしを拾うものへと入れ替わっていきます。
1つの候はおよそ5日とされますが、きっちり5日ずつと決まっているわけではありません。節気の日付は太陽の動きをもとに割り出されるため、節気から次の節気までの長さが年や季節によって15日前後で伸び縮みします。それを3つに分けた候にも、4日から6日ほどの幅が出ます。
8月は1年でもっとも暑さが厳しい時期ですが、暦の上では「秋」が始まります。8月7日ごろの立秋を境に、季節の挨拶も「残暑」へと変わっていきます。実際の暑さと暦のギャップを楽しめるのが、この時期の七十二候の面白さです。


8月の七十二候 一覧表【2026年の日付つき】
まずは8月に巡る七十二候を、立秋・処暑の節気ごとに一覧で確認しましょう。日付は2026年(令和8年)の目安です。年によって1日前後することがあります。
| 節気 | 候の名前 | 読み方 | 2026年の時期 |
|---|---|---|---|
| 立秋 初候 | 涼風至 | すずかぜいたる | 8月7日ごろ〜 |
| 立秋 次候 | 寒蝉鳴 | ひぐらしなく | 8月13日ごろ〜 |
| 立秋 末候 | 蒙霧升降 | ふかききりまとう | 8月18日ごろ〜 |
| 処暑 初候 | 綿柎開 | わたのはなしべひらく | 8月23日ごろ〜 |
| 処暑 次候 | 天地始粛 | てんちはじめてさむし | 8月28日ごろ〜 |
表の「時期」は、その候が始まる日を示しています。立秋の次にくる節気は白露で、2026年は9月7日。この区切りから、立秋の3候は6日・5日・5日、処暑の2候は5日ずつという日数の配分になります。終わりの日は次の候が始まる前日が目安で、涼風至は8月12日ごろまで、寒蝉鳴は17日ごろまで、蒙霧升降は22日ごろまで、綿柎開は27日ごろまで、天地始粛は9月1日ごろまでです。


処暑の末候「禾乃登(こくものすなわちみのる)」は9月2日ごろからとなり、暦の上では9月の候として扱われます。8月の候は、立秋の3つと処暑の2つを覚えておくと整理しやすくなります。


立秋の候(8月7日〜)
立秋は2026年は8月7日(金)。暦の上で秋が始まる節気です。まだ暑い盛りですが、七十二候には早くも秋の入口を感じさせる名前が並びます。立秋の3つの候を順に見ていきましょう。
「立」は季節が始まることを表す字で、立秋は立春・立夏・立冬と並ぶ「四立(しりゅう)」の1つです。暦の上では、この日から立冬の前日までが秋という区分になります。
立秋の日付は近年だと8月7日か8日のどちらかで、2026年は7日、翌2027年は8日です。日付が動くぶん、候の入りも1日ずれる年があります。
涼風至(すずかぜいたる)
「涼風至」は、立秋の初候で、2026年は8月7日ごろから巡ります。読み方は「すずかぜいたる」。涼しい風が立ち始める、という意味です。
真夏の暑さの中にも、ふと頬をなでる風がわずかに涼しく感じられる頃を表しています。朝晩や日かげで、夏とは少し違う風の気配に気づける季節です。
「至」は「いたる」と読み、そこまで届く、やって来るという意味の字です。涼しさが「生まれる」でも「増す」でもなく「至る」と書かれているところに、遠くから風が運ばれてくるような語感があります。
風の変化は気温より先に表れることがあり、日が落ちてしばらくたった時間帯や、木かげ・水辺のそばでは気づきやすくなります。
寒蝉鳴(ひぐらしなく)
「寒蝉鳴」は、立秋の次候で、2026年は8月13日ごろから。読み方は「ひぐらしなく」です。ヒグラシ(蜩)が鳴き始める頃を表します。
「カナカナカナ」と響くヒグラシの声は、夏の終わりを告げる音としても親しまれてきました。夕暮れどきに聞こえてくると、どこか物寂しさと秋の近づきを感じさせます。
ヒグラシ自体は6月の終わりごろから鳴いている地域もあります。候の名前は「この日から鳴き出す」というより、声がいちばん耳につく時期を指していると受け取ると、実感に近くなります。
豆知識:「寒蝉(かんせん)」はヒグラシを指すとされることが多い言葉です。涼しい時間帯に鳴くことから、秋の訪れと結びつけられてきました。
蒙霧升降(ふかききりまとう)
「蒙霧升降」は、立秋の末候で、2026年は8月18日ごろから。読み方は「ふかききりまとう」です。深い霧が立ち込める頃、という意味になります。
夏の終わりから初秋にかけて、朝晩の気温差が大きくなると、水辺や山あいに白い霧がかかります。もうもうと立ちのぼる霧は、夏の湿った空気と秋の涼しさが入り混じる季節のしるしです。
「蒙」にはおおう・くらいという意味があり、「升降」はのぼりおりすることを指します。深い霧が立ちのぼっては降りる、その動きまで四文字に収めた名前です。
霧は、地表付近が冷えて空気中の水分が細かい水滴になることで生まれます。よく晴れて風の弱い夜の翌朝、盆地や川沿いで濃くなりやすいのはこのためです。
処暑の候(8月23日〜)
処暑は2026年は8月23日(日)。「暑さが処(おさ)まる」と書くとおり、厳しい暑さが少しずつやわらいでいく節気です。8月に巡る処暑の候は、初候と次候の2つです。
「処」には、とどまる・落ち着くという意味があります。暑さがすっかり消えるのではなく、いったん収まりどころに落ち着く段階を表した言葉です。
2026年の処暑は、8月23日から白露の前日にあたる9月6日までの15日間です。日の入りが日ごとに早まり、夕方の明るさが短くなっていくのもこの時期にあたります。
綿柎開(わたのはなしべひらく)
「綿柎開」は、処暑の初候で、2026年は8月23日ごろから巡ります。読み方は「わたのはなしべひらく」。綿の実を包む萼(がく)が開き始める頃を表します。
綿花の実が熟して、中からふんわりとした白い綿毛がのぞき始める季節です。昔の暮らしでは、この綿が衣類や布団の材料として大切に使われてきました。
「柎(ふ)」は、花びらの下側を支えるがくの部分を指す字です。「はなしべ」と読ませているのはこのためで、実を包んでいたがくが開くところまでを名前にしています。
ワタはアオイ科の植物で、オクラやハイビスカスに近い仲間です。花が散ったあとに実が育ち、熟すとはじけて中の繊維が顔を出します。
天地始粛(てんちはじめてさむし)
「天地始粛」は、処暑の次候で、2026年は8月28日ごろから。読み方は「てんちはじめてさむし」です。天地の暑さがようやく鎮まり始める頃、という意味です。
「粛」には、しずまる・あらたまるといった意味があります。空の高さや風の質が少しずつ変わり、夏の勢いが落ち着いてくる時期を表した、しっとりとした名前です。
この候には「てんちはじめてしじむ」という読みを当てる暦もあります。意味は変わらず、版によって振り方が分かれているだけです。
「天地」は空と大地、つまりあたり一帯を指す言い方です。特定の生き物や植物ではなく、その場の空気そのものの変化を名前にしているのは、8月の5候のなかでこの候だけです。



名前を知っていると、残暑の中にも「もう秋が始まっているんだ」と気づけますね。
9月に入ると、七十二候は白露から秋分へと進みます。


8月の候の名前と中国の七十二候の違い
いま日本で使われている七十二候は、中国から伝わった暦をもとに、日本の気候や暮らしに合わせて手を入れたものです。8月の5候を中国の七十二候と並べてみると、そのまま残った名前と、日本で差し替えられた名前がはっきり分かれます。
立秋では、初候の「涼風至」が両方に共通しています。一方、中国の立秋は次候が「白露降(はくろくだる)」、末候が「寒蝉鳴」という並びです。日本では白露降が使われず、寒蝉鳴が次候に繰り上がり、空いた末候に「蒙霧升降」が入りました。
処暑では、中国の初候が「鷹乃祭鳥(たかすなわちとりをまつる)」で、鷹が捕らえた獲物を並べる様子を表した名前です。日本ではここが「綿柎開」に置き換わっています。次候の「天地始粛」と末候の「禾乃登」は、中国の名前がそのまま残りました。
鷹の狩りから畑の綿へ、降りる露から立ちのぼる霧へ。8月で差し替えられた2つの候をたどると、題材が身近な農作物や、その土地で実際に目にする気象の側へ寄せられているのが分かります。
こうした日本版のもとをつくったのが、江戸時代に暦を改めた渋川春海らの仕事です。明治7年(1874年)の「略本暦」に載った形が、いま目にする七十二候の基礎になっています。
名前が入れ替わっているぶん、8月の候は中国由来の暦をそのままなぞったものではありません。読んでいて情景が浮かびやすいのは、日本の風土に合わせて言葉が選び直された結果でもあります。
8月の七十二候を暮らしで楽しむヒント
8月の七十二候は、ただ暦を知るだけでなく、季節の食べ物や言葉づかいに活かすと暮らしが豊かになります。残暑の中にも秋の気配を見つける、いくつかのヒントを紹介します。
8月は月のうちに5回、暦の上の区切りがやってきます。一度に5つ覚えようとせず、その週にあたる候だけを見ておくと、無理なく続けられます。
候の名前はどれも漢字3文字か4文字と短いので、その期間だけ手帳やカレンダーの隅に書き写しておく、といった取り入れ方もできます。
旬の食べ物・味覚で季節を感じる
8月から初秋にかけては、夏の名残と秋の走りが入り混じる、味覚の楽しい時期です。旬の食材を取り入れると、暦の移り変わりを食卓でも感じられます。
- すいか・とうもろこし・枝豆など、夏の名残の味覚
- なす・かぼちゃ・オクラといった夏野菜
- 新米やぶどう、梨など、走り出す秋の味覚
「禾乃登」が示すように、稲穂が実り始めるのもこの季節です。食材の移り変わりは、七十二候の名前とゆるやかに重なっています。
同じ8月でも、上旬から中旬は夏野菜がよく出回る時期で、処暑に入る下旬になると、店頭には秋の果物が少しずつ増えていきます。
候の名前と旬の食材が一対一で対応してはいないので、「涼風至だからこれを食べる」と決まった料理はありません。その期間に出回っているものを選ぶ、というくらいの向き合い方が合っています。
季節の言葉・あいさつに活かす
立秋を過ぎると、手紙やメールの時候の挨拶は「残暑お見舞い」へと変わります。七十二候の名前を一言添えると、季節感のある上品な文章になります。
使い方の例:「涼風至の候、いかがお過ごしでしょうか」のように、候の名前を時候の挨拶として使えます。やわらかな季節の便りになります。
気をつけたいのは、相手が読めるとは限らない点です。「涼風至(すずかぜいたる)の候」のように読みを添えるか、書き出しではなく本文のなかで触れると、堅くなりすぎません。
「〜の候」という形は候の名前でなくても使えます。迷ったときは「残暑の候」「晩夏の候」といった一般的な言い回しにしておくと、相手を選ばずに済みます。




8月の七十二候に関するよくある質問
- 8月の七十二候はいくつありますか?
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8月に巡る候は、立秋の3候(涼風至・寒蝉鳴・蒙霧升降)と処暑の2候(綿柎開・天地始粛)を合わせた5つが中心です。処暑の末候「禾乃登」は9月2日ごろからのため、9月の候として扱われます。
- 七十二候と二十四節気はどう違いますか?
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二十四節気は1年を24に分けた暦で、立秋や処暑がこれにあたります。七十二候は、その1つの節気をさらに約5日ずつ3つに分けたもので、より細かく季節の様子を表しています。
- なぜ8月なのに暦では「秋」なのですか?
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二十四節気は古代中国で作られた暦がもとになっており、実際の気候より季節を早めに区切る傾向があります。そのため、暑さの盛りである8月7日ごろから、暦の上では秋が始まります。
- 8月の候に出てくる言葉は、季語としては何月の扱いになりますか?
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俳句の歳時記も暦に沿って季節を分けているため、8月の候に出てくる言葉は秋に入るものが多くなります。「蜩(ひぐらし)」は初秋、「霧」は秋の季語です。一方、同じセミでも「蝉」は夏の季語なので、8月に鳴いていても分類が分かれます。境目が言葉ごとに違うところが、この時期の面白さです。
- 8月の七十二候は、お盆などの行事と連動していますか?
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連動はしていません。七十二候は太陽の位置をもとに日付が決まる暦で、8月13日から16日ごろのお盆は月遅れの行事として日付が固定されています。ただ2026年は、立秋の次候「寒蝉鳴」の入りが8月13日ごろで、お盆の入りとちょうど重なります。仕組みは別でも、時期が重なる年は候を覚える目印になります。
まとめ
8月の七十二候は、立秋の3候と処暑の2候を合わせた5つが中心です。涼しい風、ヒグラシの声、朝霧、綿の実、やわらぐ暑さと、夏から秋へ移ろう自然の様子が名前に込められています。
このうち蒙霧升降と綿柎開は、日本で選び直された名前です。中国から届いた暦をそのまま引き継いだのではない、という点も、8月の候を読むときの手がかりになります。
この記事のポイント:2026年の立秋は8月7日、処暑は8月23日。涼風至・寒蝉鳴・蒙霧升降・綿柎開・天地始粛の5候を覚えておくと、残暑の中にも秋の気配を見つけられます。
厳しい暑さが続く8月も、七十二候の名前を意識すると、ふとした風や夕暮れの音に秋の入口を感じられます。暦の言葉を手がかりに、季節の小さな変化を楽しんでみてください。
入りの日を確かめたいときは「8月の七十二候 一覧表」に5候と2026年の日付を、意味や由来は「立秋の候」「処暑の候」の各見出しで解説しています。


















