キリギリスの季節はいつ?鳴く時期は夏・季語が秋の理由

当ページのリンクには広告が含まれています。
katydid-season

「キリギリスって夏の虫?それとも秋の虫?」と聞かれて、はっきり答えられる人は意外と少ないかもしれません。童話では夏に歌っている姿が描かれる一方、俳句の本を開くと秋の季語として載っていて、ますます迷ってしまいます。この記事では、キリギリスが見られる時期と鳴く時間帯、卵から成虫までの一生を整理しました。あわせて「夏の虫なのに季語が秋」になった理由、東と西で種類が分かれる話、江戸の虫売りや「アリとキリギリス」との関わりまでまとめています。結論からいうと、今のキリギリスは夏を中心に鳴く虫で、季語が秋なのは昔「きりぎりす」がコオロギを指していたためです。

キリギリスの成虫が見られるのはおおむね6〜9月ごろ。鳴き声がよく聞こえるのは、晴れて暑い夏の日中です。

目次

キリギリスの季節は夏|鳴くのは7〜9月ごろが目安

キリギリスの季節はです。成虫になるのは初夏から真夏にかけてで、草むらから「ギーッ、チョン」という声が聞こえてくるのは、梅雨明けから残暑のころまでが中心になります。秋が深まるにつれて数は減り、冬を迎えるころには成虫の姿はほとんど見られなくなります。

時期キリギリスの様子
春(4〜5月ごろ)土の中の卵から幼虫がかえり、草の上で暮らし始める
初夏(6月ごろ)脱皮をくり返して大きくなり、早いものは成虫になる
夏(7〜8月ごろ)成虫が増え、オスが日中によく鳴く最盛期
初秋(9月ごろ)鳴き声は続くが次第に少なくなり、メスが土に卵を産む
晩秋〜冬成虫は寿命を迎え、卵のまま冬を越す

成虫が見られるのは6〜9月ごろ

キリギリスの成虫が見られるのは、おおむね6月から9月ごろです。日当たりのよい草原や河原、土手などで、オスが背の高い草につかまって鳴いています。成虫として過ごす期間は2〜3か月ほどとされ、夏のあいだに相手を見つけて子孫を残します。

同じ「鳴く虫」でも、スズムシやマツムシ、コオロギの仲間は8月下旬から秋にかけてが本番です。キリギリスはそれより一足早く、夏の草むらの主役といえる存在です。秋の虫の声が夜に響き始めるころ、昼間のキリギリスの声は少しずつ静かになっていきます。

よく鳴く時間帯と天気

キリギリスは、夜に鳴くイメージの強い秋の虫とは違い、昼間によく鳴くのが特徴です。とくに晴れて気温が上がった日には、朝から夕方まで元気な声が聞こえます。反対に、曇りや雨の日、気温の低い朝晩は鳴き声が少なくなります。

鳴いているのはオスだけで、前ばねをこすり合わせて音を出しています。メスへの呼びかけのほか、ほかのオスに自分の居場所を知らせる意味もあると考えられています。人の気配を感じるとぴたりと鳴きやむので、声を頼りに近づくときはゆっくり静かに歩くのがコツです。

地域や年による時期のずれ

キリギリスが鳴き始める時期は、住んでいる地域やその年の気温によって前後します。暖かい地域や気温の高い年は早めに成虫が現れやすく、標高の高い場所や涼しい地域では遅めになる傾向があります。「6〜9月ごろ」はあくまで目安として、身近な草むらの様子で確かめてみてください。

また、キリギリスは卵の状態で冬を越しますが、土の温度の変化によって、かえるまでに複数の冬を越す卵もあるとされます。こうした性質もあり、同じ場所でも年によって数の多い少ないが出ることがあります。

キリギリスの一生|卵で冬を越して夏に成虫になる

キリギリスの一生は、卵→幼虫→成虫の順に進みます。チョウやカブトムシのようにさなぎの時期がない「不完全変態」の昆虫で、幼虫は小さいながらも成虫とよく似た姿をしています。1年のうち、成虫として鳴いている期間はほんのひと夏です。

春にかえった幼虫は草の上で育つ

土の中で冬を越した卵は、春になると幼虫にかえります。地上に出てきた幼虫は体長数ミリほどで、はねはまだありません。草の上で暮らしながら、はじめはイネ科の植物の花粉や種子などを食べて育ちます。

成長するにつれて、キリギリスは植物だけでなく、ほかの小さな虫も食べるようになります。草食のイメージを持たれがちですが、実は肉食寄りの雑食です。脱皮をくり返すたびに体が大きくなり、はねも少しずつ伸びていきます。幼虫として過ごす期間は2〜3か月ほどとされます。

夏の草むらで背の高い草の茎につかまる緑色のキリギリスを、落ち着いた色合いで写したイメージ

夏に成虫になり、秋までに卵を産む

最後の脱皮を終えると、はねの伸びきった成虫になります。オスは鳴いてメスを呼び、出会ったメスはおしりの先にある長い剣のような産卵管を土に差し込んで卵を産みます。この産卵管は、オスとメスを見分けるときのわかりやすい目印です。

卵を産み終えた成虫は、秋から初冬にかけて寿命を迎えます。そのため、冬の草むらでキリギリスの成虫を見かけることはまずありません。次の世代は土の中の卵として寒い季節をやり過ごし、春になると再び草むらに現れます。

成虫の寿命は2〜3か月ほど。キリギリスが「夏の虫」とされるのは、成虫として活動し鳴く期間が、ちょうど夏から初秋に重なるためです。

夏の虫なのに季語は秋?昔の「きりぎりす」はコオロギだった

キリギリスが秋の季語になっているのは、古い時代の「きりぎりす」が、今のコオロギを指していたためと考えられています。秋の夜に鳴く虫の名前として和歌や物語に詠まれてきた「きりぎりす」が、そのまま秋の言葉として受け継がれました。朝顔が夏に咲くのに秋の季語であるように、季語の季節と実際の姿がずれている言葉は少なくありません。

平安時代の「きりぎりす」は今のコオロギ

平安時代の文学に出てくる「きりぎりす」は、今でいうコオロギのことだったとされます。一方、今のキリギリスにあたる虫は、鳴き声が機(はた)を織る音に似ていることから「はたおり」と呼ばれていました。つまり、名前と虫の組み合わせが今とは違っていたのです。

その後、時代とともに呼び名が移り変わり、現在のように「キリギリス」「コオロギ」と呼び分けるかたちに落ち着いたと考えられています。いつ、どのように入れ替わったのかについてははっきりしない部分もあります。ただ、古典に出てくる「きりぎりす」をそのまま今のキリギリスと読むと、季節や情景が合わなくなる、という点は押さえておきたいところです。

枕草子・百人一首に詠まれたきりぎりす

清少納言の『枕草子』には、心ひかれる虫を挙げた「虫は」という段があり、「すずむし」「まつむし」などと並んで「きりぎりす」と「はたおり」が別々に書かれています。当時の人がこの2つを違う虫として区別していたことがうかがえる一節です。

百人一首の91番、後京極摂政前太政大臣(藤原良経)の歌も有名です。

百人一首 91番

きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに 衣かたしき ひとりかも寝む

霜の降りる寒い夜に、むしろの上で自分の衣だけを敷いてひとり寝るのだろうか、という晩秋のさびしさを詠んだ歌です。霜が降りるころに鳴く虫といえば夏のキリギリスではなく、秋遅くまで鳴くコオロギのほうが自然です。この歌の「きりぎりす」も、コオロギを指すと解釈されています。

七十二候「蟋蟀在戸」は2026年10月18日〜22日ごろ

季節を約5日ずつに区切った七十二候にも、「きりぎりす」が登場します。二十四節気「寒露」の末候にあたる「蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)」で、2026年は10月18日〜22日ごろです。虫が戸口のそばで鳴くほど秋が深まった時期を表しています。

「蟋蟀」は、今では「こおろぎ」と読むのが一般的な漢字です。10月の後半に人家の近くで鳴くのはコオロギの仲間なので、ここでの「きりぎりす」もコオロギを指すとされます。七十二候の日付は年によって1日ほど前後するので、ほかの候もあわせて確かめておくと便利です。

俳句での季節は秋(初秋とする歳時記も)

俳句では「きりぎりす」は秋の季語です。歳時記によっては、立秋から処暑のころにあたる「初秋」の季語として載せているものもあります。コオロギを表す「蟋蟀(こおろぎ)」は秋全体を通して使える季語とされ、同じ「鳴く虫」の仲間でも扱いが少しずつ違います。

今のキリギリスの姿を思い浮かべて夏の句に使いたくなりますが、季語としては秋に分類される点に注意しましょう。季語の季節は旧暦の区切りで決まっているため、今の感覚より1か月ほど早く季節が進みます。初秋の季語をまとめて確認したい場合や、季語の分け方そのものを知りたい場合は、次の記事も参考にしてください。

生き物としてのキリギリスは夏の虫、俳句の「きりぎりす」は秋の季語。季語が秋なのは、昔の「きりぎりす」が秋に鳴くコオロギを指していた名残です。

キリギリスの種類と鳴き声|ヒガシキリギリスとニシキリギリス

ひとくちに「キリギリス」といっても、日本では現在、ヒガシキリギリスとニシキリギリスの2種に分ける考え方が広まっています。以前はまとめて「キリギリス」と呼ばれていましたが、研究が進み、住む地域や体の特徴の違いから別の種として扱われるようになりました。

すむ地域の違い

名前のとおり、ヒガシキリギリスは主に東日本側、ニシキリギリスは主に西日本側に分布しています。おおまかには、本州の青森県から岡山県あたりにかけてがヒガシキリギリス、近畿地方から九州、南西諸島にかけてがニシキリギリスとされ、近畿や中国地方では両者の分布が接したり重なったりしています。

項目ヒガシキリギリスニシキリギリス
主な分布本州(青森県〜岡山県あたり)近畿地方〜九州・南西諸島
はねの長さやや短めやや長め
はねの黒い斑紋多い傾向少なめで一列に並ぶ傾向
体の大きさやや小さめやや大きめ

鳴き声と見た目の違い

キリギリスの鳴き声は、どちらの種も一般に「ギーッ、チョン」と表されます。短い「ギーッ」と区切るような「チョン」をくり返すリズムが特徴で、関東など東日本でキリギリスを「ギッチョ」と呼ぶのも、この声に由来するとされます。2種の声を耳だけで確実に聞き分けるのは、慣れた人でないと難しいでしょう。

見た目では、上の表のように、はねの長さや黒い斑紋の並び方が手がかりになります。ただし体の色は緑色のものから褐色のものまで個体差が大きく、斑紋の出方にも幅があります。住んでいる地域とあわせて「たぶんこちらかな」と考えるくらいの気軽さで楽しむのがおすすめです。

キリギリスを見つけやすい場所

キリギリスは、日当たりのよい草丈の高い草地を好みます。河原の土手、畑や田んぼのまわり、公園の刈り込まれていない草むらなどが探しやすい場所です。晴れた夏の日中に声のする方向へ静かに近づき、草の上のほうを探すと見つけやすくなります。

ただ、体の色が草にまぎれるうえ、足音に気づくとすぐ鳴きやむため、姿を見るのはなかなか大変です。声がやんだら少し待ち、また鳴き出したら一歩ずつ近づく、というのをくり返すと見つかりやすくなります。河原や土手では足元が悪い場所もあるので、夏場は帽子と水分補給を忘れずに出かけましょう。

暮らしの中のキリギリス|江戸の虫売りと「アリとキリギリス」

キリギリスは、昔から日本人の暮らしに身近な虫でした。鳴き声を楽しむために飼う文化が江戸時代に庶民へ広がり、明治以降は童話「アリとキリギリス」を通じて、子どもにもよく知られる虫になりました。

江戸時代の虫売りと虫かご

鳴く虫の声を楽しむ風習は、もともと貴族や大名のたしなみでした。江戸時代の中ごろになると、この楽しみが庶民にも広がり、キリギリスやスズムシ、マツムシ、クツワムシなどを売り歩く「虫売り」が町に現れます。虫売りの季節は初夏から始まり、お盆のころに終わるのが習わしだったとされます。

買った虫は竹で編んだ虫かごに入れ、軒下などに吊るして声を楽しみました。駿河竹千筋細工のような、細い竹ひごを組んだ美しい虫かごも作られています。夏から鳴くキリギリスは、秋の虫より早い時期に楽しめる「夏の声」として親しまれていたと考えられます。季節の音や風景を楽しむ暮らしの知恵は、ほかの風物詩にも数多く残っています。

竹で編んだ昔ながらの虫かごが縁側の軒先に吊るされている、夏の夕方の落ち着いた風景イメージ

イソップ寓話はもともと「アリとセミ」

夏のあいだ歌って遊んでいたキリギリスが、冬に食べ物がなくて困り、せっせと働いていたアリを頼る。おなじみの「アリとキリギリス」は、イソップ寓話のひとつです。ところが、ギリシャ語で伝わる古い話では、主人公はキリギリスではなくセミでした。

この話がセミのあまりいないヨーロッパ北部などに伝わる過程で、身近なバッタやキリギリスの仲間に置き換えられたとされます。日本には、戦国時代の終わりにイエズス会が刊行した『エソポのハブラス』で「セミとアリ」の話として伝わっていました。その後、明治時代に英語などの本から翻訳されたことで「アリとキリギリス」の名前が広まった、という流れです。夏に鳴くキリギリスは、日本の季節感から見ても、この物語の役にぴったり合っていたといえるでしょう。

キリギリスの季節についてよくある質問

キリギリスは夏の虫ですか、秋の虫ですか

生き物としてのキリギリスは、成虫が6〜9月ごろに見られる夏の虫です。ただし俳句の季語としての「きりぎりす」は秋に分類されます。昔の「きりぎりす」が今のコオロギを指していたことによるものです。

冬にもキリギリスは見られますか

成虫は秋から初冬にかけて寿命を迎えるため、冬に見かけることはまずありません。キリギリスは土の中の卵の状態で冬を越し、春に幼虫がかえります。

キリギリスとコオロギの違いは何ですか

キリギリスは緑色や褐色で草の上に暮らし、主に夏の日中に鳴きます。コオロギは黒っぽい褐色で地面の近くに暮らし、主に秋の夜に鳴くのが一般的です。どちらもオスがはねをこすり合わせて音を出す点は共通しています。

キリギリスの寿命はどのくらいですか

成虫として過ごす期間は2〜3か月ほどとされます。卵の期間や幼虫の期間を含めると、生まれてから一生を終えるまではおよそ1年です。卵の状態で複数の冬を越すものもあるとされます。

キリギリスは夜にも鳴きますか

キリギリスがよく鳴くのは晴れて気温の高い日中です。暑い日には夕方ごろまで鳴き続けることもありますが、夜の草むらで聞こえる声の多くは、コオロギやスズムシなど秋の虫の仲間です。

まとめ|キリギリスは夏の虫、季語の「きりぎりす」は秋

キリギリスの季節は夏です。春に土の中の卵からかえった幼虫は、脱皮をくり返して初夏から夏に成虫になり、6〜9月ごろ、晴れた日中に「ギーッ、チョン」と鳴きます。秋までに卵を産み終えると寿命を迎え、次の世代は卵のまま冬を越します。日本では東西でヒガシキリギリスとニシキリギリスの2種に分ける考え方が広まっています。

一方、俳句の「きりぎりす」が秋の季語なのは、平安時代の「きりぎりす」が今のコオロギを指していたためです。百人一首の「霜夜」の歌や七十二候「蟋蟀在戸」を読むときも、秋に鳴くコオロギの姿を思い浮かべると情景がつかみやすくなります。夏の草むらで声を聞いたら、呼び名の移り変わりや江戸の虫売りの話も一緒に思い出してみてください。

キリギリスは6〜9月ごろに日中よく鳴く夏の虫。季語が秋なのは、昔の「きりぎりす」がコオロギを指していたためです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次