朝顔といえば夏の花、という印象を持っている方は多いのではないでしょうか。小学校の観察日記や夏休みの自由研究を思い出す方もいるはずです。
7月の朝、支柱の先で開いていた青い花が、昼前にはしぼんで小さく巻いている。朝顔の見頃は、この短い一日の積み重ねとして9月ごろまで続きます。
ところが俳句の世界をのぞくと、朝顔は「秋の季語」として扱われています。夏の花なのに秋。この食い違いに戸惑った経験がある方もいるでしょう。
この記事では、朝顔が実際に咲く季節と、季語では秋に分類される理由を整理します。あわせて、朝顔市の時期や一年を通した朝顔の姿もご紹介します。
朝顔の季節はいつ?開花時期は7〜9月
朝顔の開花時期は、おおむね7月から9月ごろです。梅雨が明けて気温が上がる時期に咲きはじめ、夏の盛りを過ぎても花をつけ続けます。
ただし、ひと口に朝顔といっても品種はさまざま。どの朝顔を指すかによって、見頃の時期は1〜2か月ほどずれます。
「何月から何月まで」で言えば、7月に咲きはじめて9月いっぱいで終わるのが標準的な流れです。咲きはじめは気温に左右されるため、九州や四国では6月下旬から開く株もあり、東北や標高の高い場所では7月下旬にずれ込みます。
いちばんの盛りは、つるが支柱の上まで伸びて花数がそろう7月下旬から8月上旬です。咲きはじめに数輪が開く朝と、最盛期に十数輪が一度に開く朝とでは、同じ株でも見え方がずいぶん違います。
日本朝顔は7〜8月、西洋朝顔は9〜10月が見頃
日本で古くから親しまれてきた「日本朝顔」は、7月から8月にかけてが最盛期です。学校で育てる朝顔の多くはこのタイプにあたります。
いっぽう「西洋朝顔」は、夏の終わりごろから咲きはじめる遅咲きの性質を持ちます。青い花で知られるヘブンリーブルーが代表的で、9月から10月にかけて見頃を迎えます。
時期がずれるのは、西洋朝顔のほうが日の短さに強く反応するためです。夜の長さが一定以上になってから花芽をつくる性質が目立ち、日の入りが早まる8月下旬以降になって、ようやくつぼみが上がってきます。
| 種類 | 開花時期 | 特徴 |
|---|---|---|
| 日本朝顔 | 7月〜8月 | 学校の観察でおなじみ。花色が豊富 |
| 西洋朝顔 | 9月〜10月 | 遅咲き。つるが長く伸び、花数が多い |
花が咲くのは早朝だけ|午前中にはしぼむ
朝顔の名前のとおり、花が開くのは早朝です。夜明け前後に咲き、日が高くなる午前中にはしぼんでしまいます。
これは、朝顔が日照時間の変化を感じ取って開花のタイミングを決める性質を持つためです。前日の日没から時間を数えて、夜明けごろに花を開かせます。
目安は、日没からおよそ10時間という長さです。日の入りが19時ごろの7月なら開花は午前5時前後、18時前に日が沈む9月には午前4時ごろと、暦が進むほど花の開く時刻は早まります。
そのため、夜も街灯や玄関灯が当たる場所に置くと、暗い時間が足りずに開花が遅れたり、つぼみのままで終わったりします。花の開かない朝が続くときは、水や肥料より先に夜の明るさを見直すと原因にたどりつきやすくなります。
一つひとつの花の寿命は短いものの、次々とつぼみがつくため、株全体としては2か月ほど花を楽しめます。
種まきは5月|まいてから咲くまでの目安
朝顔の種まきに適しているのは、遅霜の心配がなくなる5月ごろです。気温が20℃前後まで上がってからまくと発芽が安定します。
種をまいてから花が咲くまでは、およそ1か月半から2か月半。5月上旬にまけば7月中旬から下旬にかけて、最初の花が開く計算になります。
まく日を2〜3週間ずらせば、咲きはじめもその分だけ後ろへ動きます。7月のうちに咲かせたいなら連休のころ、夏休みに入ってから花を見たいなら5月中旬以降、と逆算しておくと予定が立てやすくなります。
まく場所は、最初から育てる鉢や花壇にするのが安心です。朝顔は根を傷めると生育が止まりやすく、大きくなってからの植え替えには向きません。
朝顔以外の夏の花も気になる方は、こちらの記事もあわせてどうぞ。

夏の花なのに「秋の季語」とされる理由
朝顔が秋の季語とされるのは、俳句の季節区分が旧暦にもとづいているからです。私たちが使う新暦の感覚とは、およそ1か月のずれがあります。
実際に咲く時期が夏であることと、季語の分類が秋であることは矛盾しません。二つの暦が並び立っている、と考えるとすっきりします。
ずれの幅は毎年一定ではありません。旧暦は月の満ち欠けを基準にするため、同じ日付でも新暦に直すと年ごとに3週間から1か月半ほど動きます。「およそ1か月遅れ」という言い方は、その幅をならしたものです。
それでも俳句が旧暦の区分を保ち続けているのは、過去に詠まれてきた膨大な句と季節感を共有するためでもあります。分類を新暦に合わせ直せば、昔の句の季節が総入れ替えになってしまいます。
俳句の季語では朝顔は「初秋」
歳時記において、朝顔は秋の季語、それも初秋に分類されています。初秋とは、立秋から白露の前日までの期間を指します。
立秋は毎年8月7日ごろ。暑さの真っただ中ですが、暦の上ではここから秋が始まります。朝顔が勢いよく咲き誇る時期と、ちょうど重なっているわけです。
「暑いのに秋」ではなく、「暦の上で秋が始まるころに最も美しく咲く花」。それが季語としての朝顔です。
同じ初秋に分類される季語には、ほかにもさまざまなものがあります。


旧暦の七月=現在の8月下旬に咲く花だった
旧暦の七月は、新暦に直すとおおよそ8月上旬から9月上旬にあたります。かつての人々にとって、朝顔は「七月の花」でした。
旧暦では七月・八月・九月が秋とされていたため、七月に咲く朝顔は自然と秋の花に位置づけられます。当時の暮らしの感覚では、なんの違和感もなかったのです。
明治期に新暦へ切り替わったあとも、俳句の季語は旧暦の区分を受け継ぎました。その結果、現代の体感とのずれだけが残ることになりました。
旧暦を基準にした季節の数え方は、朝顔にかぎった話ではありません。万葉集には秋の野の花を七つ数えた歌があり、そこに詠まれた「朝貌の花」が何を指すのかは、いまも説が分かれています。

「牽牛花」と七夕とのつながり
朝顔には「牽牛花(けんぎゅうか)」という別名があります。牽牛とは、七夕の彦星のことです。
旧暦の七夕は七月七日。朝顔が咲きはじめる時期と重なることから、この花と星の伝説が結びつけられました。朝顔の名が秋の気配とともに語られてきた理由の一つです。
朝顔の種は「牽牛子(けんごし)」という名の生薬として扱われてきました。日本へは奈良時代に遣唐使が薬として持ち帰ったのが始まりとされ、花を観賞するために育てられるようになるのは、ずっとあとの時代です。
名の由来には諸説あり、中国の古い薬物書には、この薬を求めて牛を牽いて行き来したことによるという説も記されています。牽牛が星の名でもあったことで、七夕のころの花という印象はいっそう重なっていきました。
暦の上での秋がいつ始まるのかについては、二十四節気を知ると理解が深まります。

朝顔と季節の行事|朝顔市は7月初旬
朝顔にまつわる行事として広く知られているのが「朝顔市」です。開催は7月上旬で、開花の最盛期より少し早い時期にあたります。
市が動きはじめるのは早朝です。花の開いた姿を見ながら鉢を選べるのは午前中のうちで、昼を過ぎると同じ鉢もつぼみと葉だけの姿に変わります。花を見て決めたい人が朝のうちに出かけるのは、そのためです。
朝顔市と名のつく催しは各地にありますが、日程が3日間と決まっていて規模が大きいのは入谷です。「朝顔市」といえばここを指すことが多く、夏の便りとして写真つきで報じられるのも例年この市になります。

入谷朝顔まつりは毎年7月6〜8日
日本でもっとも有名な朝顔市が、東京・入谷の鬼子母神(真源寺)周辺で開かれる「入谷朝顔まつり」です。開催日は毎年7月6日から8日の3日間と決まっています。
言問通りに朝顔を扱う業者と露店が並び、期間中は多くの人でにぎわいます。夕方から夜にかけて歩行者天国となる時間帯が設けられるのも特徴です。
時間帯は午前5時ごろから夜11時ごろまでと長く、朝と夜で雰囲気が入れ替わります。鉢を選ぶなら花の開いている早い時間、露店のにぎわいを楽しむなら日が落ちてから、と目的で時間を決めると動きやすくなります。
なぜ開花前の7月上旬に市が立つのか
朝顔市が7月上旬に開かれるのは、鉢植えを買った人が家で開花を楽しめるようにするためです。つぼみのついた状態で買い求め、自宅で咲かせるのが本来の楽しみ方でした。
また、旧暦の七夕(牽牛花との縁)や、暑さが本格化する前という時期の条件も重なっています。市が終わってから、夏本番の花の季節がやってきます。
鉢を選ぶときに見るのは、咲いている花の数よりも、つぼみがいくつ上がっているかです。つぼみの多い株ほど家で咲かせられる期間が長く、市の主役が「これから咲く鉢」であることの意味も、そこにあります。
七夕やほおずき市など、7月の行事をまとめて知りたい方はこちらへ。

季節ごとに見る朝顔の一年
朝顔は一年草なので、春に種をまき、秋に種を残して枯れるまでが一つのサイクルです。季節ごとの姿を追うと、朝顔の全体像がつかめます。
下の表に冬の欄がないのは、朝顔が冬を越さないからです。霜が降りるころには株ごと枯れ、翌年は採っておいた種か、新しく買った種や苗から始めることになります。支柱や鉢を片づけるのもこの時期です。
同じ株を何年も育てていく庭木や宿根草とは、そこが大きく違います。一年で完結するぶん、季節ごとの変化が短い期間にぎゅっと詰まっているのが朝顔の面白さです。
| 季節 | 時期 | 朝顔の様子 |
|---|---|---|
| 春 | 4月〜5月 | 種まきの準備。5月ごろに種をまく |
| 初夏 | 6月 | 発芽してつるが伸びはじめる |
| 夏 | 7月〜8月 | 開花の最盛期。毎朝次々と咲く |
| 秋 | 9月〜10月 | 花じまい。実がふくらみ種ができる |
春(4〜5月):種まきの準備
4月は土や鉢、支柱を用意する時期です。種まきは気温が安定する5月に入ってからが安心できます。
朝顔の種は殻がかたいため、市販の種でなければ発芽しにくい場合があります。まく前に一晩水につけておくと、発芽がそろいやすくなります。
鉢で育てるなら、1株につき直径20cm前後のものが扱いやすいサイズです。つるが伸びるほど水を吸うので、小さすぎる鉢は真夏に水切れを起こしやすくなります。土は市販の草花用培養土で足ります。
置き場所は、午前中にしっかり日が当たるところが向いています。支柱は種をまくときに立てておくと、つるが伸びはじめてから根を傷める心配がありません。
夏(6〜8月):つるが伸び、花の最盛期
6月に入るとつるが勢いよく伸び、支柱に巻きついていきます。この時期は水切れに注意が必要です。とくに真夏は、朝と夕方の2回の水やりが基本になります。
本葉が5、6枚になったころにつるの先を摘んでおくと、わき芽が伸びて花のつく枝数が増えます。摘まずに伸ばした株は1本のつるが上へ向かうばかりで、下のほうが寂しくなりがちです。
7月から8月にかけてが花の最盛期。毎朝新しい花が開き、しぼんでは次のつぼみが控える、という繰り返しが続きます。
肥料は与えすぎに気をつけます。窒素分が多いとつると葉ばかりが茂り、そのわりに花つきが落ちることがあります。葉の色が濃くて元気なのに花が少ないときは、肥料を減らして様子を見ます。
秋(9〜10月):花じまいと種の採取
9月を過ぎると花数が減り、代わりに実がふくらみはじめます。実が茶色く乾いてきたら、種を採取するタイミングです。
目安は、実の緑が抜けてカサカサと音がするようになってからです。緑が残るうちに採ると、乾かしても芽の出ない種が混じります。雨の直後より、晴れた日が続いたあとのほうが中まで乾いています。
採った種は封筒などに入れ、風通しのよい涼しい場所で保管します。翌年の春、また同じサイクルが始まります。
なお、この種は先に触れた「牽牛子」として薬に用いられてきたもので、口に入れるものではありません。観察が終わったら、小さな子どもの手が届かない場所にしまっておくと安心です。
朝顔の一年は「春にまき、夏に咲き、秋に種を残す」。季語が秋なのは、この後半の姿を古い暦が切り取ったからだと考えると納得しやすくなります。
朝顔の季節に関するよくある質問
- 朝顔は何月まで咲きますか?
-
日本朝顔は8月いっぱいまで、西洋朝顔は10月ごろまで咲きます。日本朝顔でも、水やりと肥料を切らさなければ9月まで花が続くことがあります。
- 朝顔は夏と秋どちらの季語ですか?
-
俳句では秋の季語、それも初秋に分類されます。実際の開花は夏ですが、旧暦にもとづく区分のため秋として扱われます。
- 朝顔の花言葉は季節と関係ありますか?
-
朝顔の花言葉には「はかない恋」などがあり、朝に咲いて昼にはしぼむ花の姿に由来します。季節そのものより、一日のうちの短い開花時間が背景にあります。
- 夏休みの観察日記に朝顔が使われるのはなぜですか?
-
種まきから開花までの変化が短期間で観察でき、育てやすいためです。7月から8月という夏休みの期間が、ちょうど開花時期と重なる点も理由の一つです。
- 9月に咲いている朝顔は日本朝顔ですか?
-
9月に入ってもよく咲いている株は、西洋朝顔であることが多いです。見分けたいときは葉を見てください。日本朝顔の葉は三つに切れ込んだ形が多いのに対し、西洋朝顔の葉は切れ込みのない丸いハート形をしています。
まとめ
朝顔の季節について、開花時期と季語の両面から見てきました。要点を整理します。
- 朝顔の開花時期は7月から9月ごろ
- 日本朝顔は7〜8月、西洋朝顔は9〜10月が見頃
- 俳句では秋(初秋)の季語に分類される
- 旧暦の七月に咲く花だったことが、秋の季語とされる理由
- 朝顔市は開花前の7月上旬に開かれる
- 花が開くのは日没からおよそ10時間後。夏の終わりに近づくほど早い時刻に開く
- 種まきは5月、咲きはじめまではおよそ1か月半から2か月半
9月の朝、同じつるに開いた花と茶色くなった実が並んでいることがあります。暦の上の区分と、目の前の株の様子がいちばん近づくのが、この時期の姿です。
「夏の花なのに秋の季語」という食い違いは、旧暦と新暦という二つのものさしが並んでいるために生まれます。どちらかが誤りというわけではありません。
今年の夏、朝顔を見かけたら、暦の上ではもう秋が近いのだと思い出してみてください。花の見え方が少し変わるかもしれません。
