インスタントコーヒーの日は8月11日|由来と1杯10円の歴史

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お湯を注ぐだけで一杯できあがる。あたりまえのように棚に置いてあるインスタントコーヒーですが、それが日本の家庭に届くまでには長い助走がありました。

8月11日は「インスタントコーヒーの日」です。山の日と同じ日付なので祝日の陰に隠れがちですが、由来をたどると1960年の日本と、それより60年も前にアメリカで研究を続けた一人の日本人に行きあたります。

この記事では、日付が8月11日になった理由、発売日をめぐって資料が割れている事情、日本人が原型を発明したという話の中身、そして製法による味の違いまでをまとめました。結論から書くと、由来は1960年に国産第1号が発売された日にちなむ、というのが通説です。

目次

インスタントコーヒーの日は8月11日|由来は1960年の国産第1号発売

インスタントコーヒーの日は、毎年8月11日です。1960年(昭和35年)のこの日に、森永製菓が国産初のインスタントコーヒーを発売したことにちなむ、と紹介されています。年によって日付が動くことはありません。

語呂合わせから生まれた記念日ではなく、実際のできごとが下敷きになっているタイプです。8月の記念日には「8」の読みを使ったものが多いなかで、この日は少し毛色が違います。

項目内容
日付8月11日(毎年固定)
由来1960年に森永製菓が国産初のインスタントコーヒーを発売
制定者はっきりした資料が見あたらない
表記のゆれ「インスタント・コーヒーの日」と中黒を入れる書き方もある
同じ日の祝日山の日(2016年施行)

誰がこの記念日を定めたのかについては、はっきりした資料が見あたりません。日本記念日協会に登録された記念日のように、制定者や申請年がたどれるものとは性格が異なります。長く語り継がれるうちに定着した記念日、と考えるのが自然でしょう。

森永製菓が発売した「日本初の国産」という意味

ここで大事なのは「国産初」という言い回しです。インスタントコーヒーそのものは、それ以前から日本にありました。戦後、進駐軍が持ち込んだものや輸入品が出まわっていたのです。

ただし当時の輸入品は高級品でした。庶民が日常的に買える価格ではなく、贈答に使われることもあったといいます。国内メーカーが自前でつくって売り出したことに、1960年の大きな意味があります。

森永製菓はもともと菓子の会社です。ミルクキャラメルやチョコレートで知られたメーカーが、粉末乳の技術を土台にコーヒーの粉末化へ進んだ形になります。乾燥させて粉にする技術は、菓子づくりと地続きだったわけです。

8月11日は「インスタントコーヒーが生まれた日」ではなく、「日本で国産品が売り出された日」です。発明の記念日ではない、という点をおさえておくと由来を説明しやすくなります。

発売日を「8月10日」とする資料もある

調べていくと、ひとつ引っかかる点が出てきます。森永製菓の発売日を8月10日と記す資料が複数あるのです。「今日は何の日」の類でも、8月10日の欄にこのできごとを置いているものが見つかります。

一方で、記念日そのものは8月11日として広く紹介されています。発売の告知日と店頭に並んだ日がずれていたのか、資料の伝わり方で日付が1日動いたのか、決め手になる説明は見あたりません。

日付をめぐる整理
  • 記念日「インスタントコーヒーの日」=8月11日で定着している
  • 森永製菓の発売日は、8月10日とする資料と8月11日とする資料の両方がある
  • どちらが正しいかを決められる一次資料は、一般には公開されていない

人に話すときは「1960年の8月、森永製菓が国産初のインスタントコーヒーを発売した」とまでにしておくと安全です。日付を1日単位で断言しない、という構えがちょうどよいところでしょう。

1杯10円ほど|昭和35年の家庭に何が起きたか

国産インスタントコーヒーが受け入れられた理由は、手軽さと価格の2つに集約できます。1杯あたり10円ほどだった、と紹介する資料があります。豆を挽く道具も、湯を落とす手間もいりません。

当時の広告では、湯を注いですぐ飲めることが前面に押し出されました。「5秒でできる」といった調子の売り文句が使われたと伝えられています。時間の短さを数字で見せる手法は、今の広告とそう変わりません。

コーヒーはそれまで、外で飲むものでした。喫茶店に入って注文する飲みものが、台所の棚に置かれるようになる。この移動が、1960年前後に起きたことの中身です。

昭和35年はこんな年だった

1960年は昭和35年にあたります。高度経済成長のただ中で、家電が家庭に入りはじめた時期です。テレビや洗濯機が広まっていく流れと、インスタント食品が広まる流れは重なっています。

インスタントラーメンが世に出たのが1958年、国産インスタントコーヒーが1960年。数年のあいだに「湯を注ぐだけ」の食品が続けて登場しました。家事にかかる時間を短くする、という共通の方向を持っていたことになります。

西暦と和暦を行き来しながら年表を追いたいときは、早見表があると便利です。祖父母の世代の話を聞くときにも重宝します。

「溶ける」ことが驚きだった時代

いま見れば当然の性質ですが、粉が湯にすっと溶けることは当時の驚きでした。ドリップの器具をそろえなくても、カップと湯さえあればコーヒーになる。この身軽さが家庭に受け入れられた最大の理由でしょう。

やがて瓶入りの製品が定番となり、来客時にさっと出せる飲みものとして定着していきます。贈答用の詰め合わせが売られるようになったのも、この延長線上のできごとです。

「インスタント」は英語で「即座の」という意味です。粉末コーヒーを指す言葉として広まったのは、まさにこの手軽さゆえでした。

原型を発明したのは日本人?カトウ・サトリという人物

インスタントコーヒーの歴史には、日本人の名前が出てきます。アメリカに渡っていた化学者、カトウ・サトリです。1899年に、コーヒーの抽出液を粉末にすることに成功したと伝えられます。

ただしこの話は、細部が固まっていません。名前の正しい読み方すら定説がなく、「加藤サトリ」「カトウ・サトリ」と表記が揺れています。経歴のたどりにくさも含めて、謎の多い人物です。

緑茶の研究から生まれた副産物だった

おもしろいのは、出発点がコーヒーではなかったという点です。カトウが取り組んでいたのは緑茶を粉末にする研究で、その過程で同じ手法をコーヒーに応用したとされています。

成果が公の場に出たのは1901年です。ニューヨーク州バッファローで開かれたパンアメリカン博覧会で、「ソリュブル・コーヒー(可溶性コーヒー)」の名で発表されました。ソリュブルとは「溶ける」という意味です。

会場では実際に湯に溶かして飲ませたと伝えられますが、商品として広がることはありませんでした。資金や販路の問題が壁になったとみられています。

アメリカ特許の取得日も8月11日だった

カトウはこの製法でアメリカの特許を取得しています。特許番号は735,777、名称は「Coffee Concentrate and Process of Making Same」。取得の日付は1903年8月11日でした。

記念日と同じ8月11日である点は目を引きます。ただし、この特許にちなんで記念日が決まったという説明は見あたりません。偶然の一致とみるのが妥当です。

とはいえ、8月11日という日付に「国産第1号の発売」と「日本人の特許取得」が並んでいるのはおもしろい巡り合わせです。雑談のネタとしては十分に使えます。

「発明者」が諸説に分かれる理由

では発明者はカトウで確定かというと、そう単純ではありません。似た技術の記録が、前後にいくつも残っているためです。

人物・できごと位置づけ
1890年デイビッド・ストラング(ニュージーランド)可溶性コーヒー粉末の製法で特許を取得(開発は1889年)
1899年カトウ・サトリ(日本)抽出液の粉末化に成功。1901年に博覧会で発表
1903年カトウ・サトリアメリカ特許 735,777 を取得(8月11日)
1906年ジョージ・ワシントン(アメリカ)別の製法で特許を取得し、商品化にこぎつける

意見が割れるのは、「発明」をどの段階と考えるかが人によって違うからです。実験に成功した時点なのか、特許を取った時点なのか、それとも商品として売れた時点なのか。基準を変えれば答えも変わります。

「インスタントコーヒーを発明したのは日本人」という言い方は、少し勇み足かもしれません。「日本人が早い時期に製法を確立し、特許まで取っていた」と伝えるほうが、事実にそっています。

フリーズドライとスプレードライ|製法で味が変わる

店頭の商品を見比べると、粒の大きさが違うことに気づきます。これは製法の差です。インスタントコーヒーの乾燥方法は、大きくフリーズドライスプレードライの2種類に分かれます。

どちらもコーヒーの抽出液から水分を抜いて粉にする、という点では同じです。分かれ目は、熱を使うかどうかにあります。

項目フリーズドライスプレードライ
日本語名凍結乾燥噴霧乾燥
やり方凍らせてから真空で水分を飛ばす熱風のなかへ霧状に吹き、瞬間的に乾かす
ほとんど加えない加える
粒の見た目粗い。かたまり状で角がある細かい。さらさらした粉状
香り残りやすい熱の分だけ飛びやすい
溶けやすさやや時間がかかるすぐ溶ける

瓶に入った粒の粗いタイプは、たいていフリーズドライです。詰め替え用の袋やスティック、自動販売機の原料に使われる細かい粉は、スプレードライであることが多くなります。

牛乳に混ぜるアイスコーヒーや、菓子づくりに使うなら、溶けやすいスプレードライが向いています。そのまま湯で飲むなら、香りの残るフリーズドライを選ぶ人が多いようです。用途で選び分けると失敗が減ります。

「レギュラーソリュブルコーヒー」という表示

最近の棚では、見慣れない表示も目につきます。「レギュラーソリュブルコーヒー」と書かれた商品です。これはインスタントコーヒーに、細かく挽いたコーヒー豆を加えたものを指します。

粉末だけでは出しにくい香りを、豆そのもので補う考え方です。溶け残りではなく、意図して混ぜられた微粉なので、カップの底に少し残ることがあります。

「レギュラーコーヒー」は挽いた豆そのもの、「インスタントコーヒー」は溶ける粉末、「レギュラーソリュブルコーヒー」はその中間。3つは別ものとして表示が分かれています。

インスタントコーヒーの日においしく淹れる4つの手順

せっかくの記念日なので、いつもより少しだけ丁寧に淹れてみましょう。手順そのものは簡単ですが、湯の温度と混ぜ方を変えるだけで印象が変わります。

STEP
カップを湯であたためる

先に湯を入れて捨てるだけで、飲みおわりまでの温度の落ち方が変わります。冷えた陶器は思った以上に熱を奪うためです。ひと手間ですが効果はわかりやすく出ます。

STEP
粉を少量の湯で先に練る

粉をカップに入れ、まず小さじ1杯ほどの湯を落としてよく練ります。とろりとするまで混ぜると、粉のだまが残りません。この段階で香りが立ちはじめます。

STEP
沸騰させた湯を少し落ち着かせる

沸騰直後の湯をそのまま注ぐと、苦みが立ちやすくなります。やかんの火を止めて少し置き、90度前後を目安にするとまろやかにまとまります。

STEP
カップのふちから静かに注ぐ

中心に勢いよく落とすと、香りが一気に飛んでしまいます。ふちを伝わせるように注ぎ、最後にひと混ぜするだけで十分です。混ぜすぎないほうが香りが残ります。

暑い時季なら、濃いめに溶かして氷にあてるアイスもおすすめです。粉を少量の水で練ってから氷と牛乳を注ぐと、混ぜ残りが出にくくなります。

保存は「湿気」と「におい」に気をつける

インスタントコーヒーが苦手とするのは湿気です。粉が固まったり、香りが抜けたりする原因になります。開封したらふたをしっかり閉め、直射日光の当たらない場所に置いてください。

冷蔵庫に入れたくなりますが、出し入れのたびに結露しやすくなります。においを吸いやすい性質もあるため、常温の戸棚で保存するほうが扱いやすいでしょう。

濡れたスプーンを瓶に入れるのは避けてください。ひとすくいぶんの水分でも、残りの粉が固まる引き金になります。

湯を注いだマグカップと瓶入りインスタントコーヒーが並ぶ、落ち着いたトーンのテーブルの風景

8月11日はほかにもある記念日

8月11日は、記念日が重なっている日です。国民の祝日である山の日をはじめ、いくつもの記念日が同じ日付に置かれています。

  • 山の日:2016年に施行された国民の祝日。16番目にできたもっとも新しい祝日
  • ガンバレの日:1936年のベルリン五輪で、実況が「前畑ガンバレ」と繰り返した日にちなむ
  • マッシュルームの日:日本で初めて栽培に成功した森本彦三郎の誕生日にちなみ、販売会社が制定
  • きのこの山の日:山の日にちなんで、菓子メーカーが制定

由来の立て方がそれぞれ違うところに、記念日という文化のおもしろさがあります。実際のできごとに由来するもの、語呂合わせから生まれたもの、人物の誕生日をとったもの。同じ日付に3種類が同居しています。

前日の8月10日にも、身近な食べものの記念日があります。こちらは数字の読み方から生まれた記念日で、由来のたどり方がインスタントコーヒーの日とは対照的です。

コーヒーの記念日は10月1日にもある

コーヒーにちなむ記念日は、8月11日だけではありません。10月1日は「コーヒーの日」です。全日本コーヒー協会が1983年に定めたもので、2015年からは「国際コーヒーの日」としても位置づけられています。

10月1日になった理由は、朝晩が冷えはじめてコーヒーの消費が伸びる時期だから、と説明されています。暑い盛りの8月11日と、涼しくなる10月1日。季節の違う2つの記念日が、それぞれの理由で置かれているわけです。

よくある質問

インスタントコーヒーの日は誰が制定したのですか?

制定者を示すはっきりした資料は見あたりません。1960年の森永製菓の発売にちなむ記念日として紹介されていますが、団体名や申請年までたどれる記録は確認できていません。

インスタントコーヒーの日と山の日は関係がありますか?

日付が同じだけで、由来のつながりはありません。山の日は2016年に施行された国民の祝日、インスタントコーヒーの日は1960年の発売にちなむ記念日です。

インスタントコーヒーを発明したのは本当に日本人ですか?

カトウ・サトリが1899年に粉末化へ成功し、1903年にアメリカ特許を取得した記録があります。ただし1890年のデイビッド・ストラング、1906年のジョージ・ワシントンにも同種の特許があり、どこを「発明」と数えるかで評価が分かれます。

フリーズドライとスプレードライはどちらを選べばよいですか?

そのまま湯で飲むなら、香りが残りやすいフリーズドライが向いています。牛乳に溶かす、菓子づくりに使うなど溶けやすさを求める場面では、粒の細かいスプレードライが扱いやすくなります。

開封したインスタントコーヒーはどこに置くのがよいですか?

ふたを閉めて、直射日光の当たらない常温の場所が扱いやすいでしょう。冷蔵庫は出し入れのたびに結露しやすく、においも移りやすいため注意が必要です。

まとめ

インスタントコーヒーの日について、日付・由来・歴史を整理してきました。要点を振り返ります。

  • インスタントコーヒーの日は毎年8月11日。国民の祝日である山の日と同じ日付
  • 由来は1960年(昭和35年)に森永製菓が国産初のインスタントコーヒーを発売したこと
  • 発売日を8月10日とする資料もあり、日付は1日単位で断言しないほうが無難
  • 制定者を示すはっきりした資料は見あたらない
  • 原型はカトウ・サトリが1899年に粉末化し、1903年8月11日にアメリカ特許を取得
  • 製法はフリーズドライとスプレードライの2種類。香りか溶けやすさかで選び分ける

お湯を注ぐだけの一杯にも、120年をこえる積み重ねがあります。8月11日は、瓶のふたを開けるときに少しだけその道のりを思い出してみてください。

8月にはお盆や夏祭りをはじめ、行事や記念日が集まっています。ひと月の流れをまとめて知りたい方は、こちらもあわせてどうぞ。

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