カレンダーや手帳の日付の隅に、小さく「先負」と書かれているのを見つけたことはありませんか。読み方も意味もわからず、なんとなく気になったまま過ごしている人は多いものです。
予定の候補日に先負が混じっていると、そのまま押さえてよいのか手が止まります。式場の空き枠や納車日の連絡は返事までの時間が短く、じっくり調べる余裕もありません。日そのものを動かすか、当日の進め方を変えるかの二択になりやすい場面です。
先負は六曜のひとつで、ひとことで言えば「午前は控えめに、午後は落ち着いて動くとよい日」とされています。この記事では、読み方や意味、午前と午後の吉凶、避けたいこととされる行動まで、やさしく整理していきます。
先負とは?まずは読み方と基本の意味
先負とは、その日の吉凶を6種類で示す「六曜(ろくよう)」のひとつです。基本の意味は「先んずれば負ける」、つまり急いで物事を進めると良くない結果になりやすいという考え方を表しています。
そのため先負の日は、何事も先を急がず、平静に過ごすのがよいとされています。勝負を仕掛けたり、慌てて結論を出したりするのには向かない日、というイメージで覚えておくとわかりやすいでしょう。
「せんぶ」「せんまけ」読み方が複数ある理由
先負の読み方は、一般的には「せんぶ」です。ただし「せんまけ」「さきまけ」「せんぷ」と読まれることもあり、ひとつに定まっていません。
読み方が複数あるのは、六曜が長い歴史のなかで庶民に広まる過程で、漢字の音読みと訓読みが混ざって伝わってきたためと考えられています。どの読み方が間違いというわけではなく、地域や時代によって呼び方に幅があるのが実情です。

会話のなかでは「せんぶ」と読んでおけば、まず通じますよ。
「先んずれば即ち負ける」先負の由来
先負は、六曜のなかで「先勝(せんしょう)」と対になる日です。先勝が「先んずれば勝つ=早く動くほどよい」という意味なのに対し、先負はその逆で「先んずれば負ける=急ぐと良くない」という意味を持ちます。
名前に「負」という字が入っているため不吉に感じる人もいますが、これはあくまで「先を争うと負ける」という戒めです。一日まるごとが凶の日というわけではありません。
「先んずれば即ち負ける」の「先」が指すのは、順番の先です。勝ち負けを競う相手がいない予定でも、こちらから先回りして動くこと自体を控える、という読み方になります。
自分の予定に当てはめるなら、申し込む・持ちかける・催促するといった働きかけが「先んずる」に当たります。相手からの連絡に応じる、前から決まっていた予定をこなすといった動きは、この戒めの対象には入りません。
先負の時間帯|午前は凶・午後は吉
先負の大きな特徴は、時間帯によって吉凶が変わる点です。午前中は凶、午後は吉とされており、何かを始めるなら午後に回すのがよいと考えられています。
これは「急がず控えめに」という先負の性質と結びついています。一日の前半は静かに過ごし、後半になってから動き出す、というリズムをイメージするとわかりやすいでしょう。
時間帯を意識することになるのは、予約の時刻を決めるやり取りの場面です。引っ越しの作業開始、車の受け渡し、来客の到着時刻は、いずれも午前枠か午後枠かを先に押さえる形で進みます。日程そのものを動かせないときでも、枠の選び方だけは自分で決められることが多い部分です。


午後は何時から吉になる?
先負で吉とされる「午後」は、一般的にお昼の12時以降を指すと考えられています。ただし正午ちょうどから切り替わるとする説や、午後2時頃からとする説もあり、厳密な時刻が決まっているわけではありません。
気になる行事や手続きがある場合は、お昼を過ぎて午後の落ち着いた時間帯に行えば、先負の考え方の上では問題ないとされています。
どちらの説を取るか決めきれないときは、午後2時より後に予定を寄せると両方の見方を満たせます。式の開始時刻や窓口での手続きなど、こちらで時刻を選べるものはこの目安に合わせると迷いません。
先負の時間帯の目安
- 午前(〜12時頃)…凶。急ぎの用事や勝負事は控えめに
- 午後(12時頃〜)…吉。お祝い事や新しい行動はこちらに
なぜ午前と午後で吉凶が分かれるのか
先負の吉凶が時間帯で分かれるのは、六曜がもともと一日の「時の吉凶」を占う考え方から発展してきたためです。先勝・先負・友引・赤口などは、いずれも時間帯ごとに吉凶が割り当てられています。
先負の場合は「先を急がない=後の時間ほどよい」という性質から、前半が凶・後半が吉という配分になっていると整理できます。難しく考えず、「午後の方が落ち着いて動ける日」と覚えておけば十分です。
先負にやってはいけないこと・避けたいこと
先負に避けたいとされるのは、おもに勝負事や急ぎの行動です。「先んずれば負ける」という意味から、何かを先回りして仕掛ける行動は控えめにするのがよいとされています。
ただし、これらは「絶対にしてはいけない」という決まりではなく、あくまで縁起をかつぐ際の目安です。気にしすぎる必要はありません。
気になりやすいのは当日の朝ではなく、予定を組む段階です。数週間前に候補日を並べ、どの日に何を入れるかを決めるときに、先負の午前をどう扱うかが問題になります。当日になってから避けようとすると、動かせる予定はごく限られてしまいます。
勝負事・契約・急ぎの用事は控えめに
先負の考え方の上で、特に午前中に避けたいとされるのは次のような行動です。気になる場合は、午後に回すか別の日を選ぶと安心です。
- 勝負事(賭け事・くじの購入など先を争うもの)
- 急いで決める契約や重要な交渉
- 朝一番でのスタートが必要な新規の物事
- 慌ただしく進める引っ越しや手続き
線引きに迷ったら、自分から動き出す用事かどうかで分けると整理できます。こちらが申し込む、値段を提示する、締め切りを設けるといった予定は午前を外します。相手の都合ですでに決まっていた打ち合わせは、そのまま進めて構いません。
契約なら、押印や署名の時刻だけを午後に寄せる方法もあります。書類の受け渡しと説明を午前に済ませ、署名は昼を回ってから行えば、相手の段取りを大きく崩さずに済みます。
「やってはいけない」は絶対ではない
先負は仏滅ほど凶のイメージが強い日ではありません。午後が吉とされている分、時間帯さえ選べば多くの行事を行えると考えられています。
そもそも六曜は、現代では科学的な根拠のある暦注ではなく、縁起をかつぐための風習として親しまれているものです。気にする人への配慮として知っておく、くらいの距離感がちょうどよいでしょう。



大切なのは、相手や家族が気にするかどうか。そこを基準に考えると迷いませんね。
六曜のほかに、日そのものを避ける対象として扱われる暦注もあります。八日ごとにめぐる不成就日は時間帯の区別がなく、一日を通して気にされる点が先負とは違います。
不成就日にどんなことが避けられているかは、こちらの記事に書いています。


先負でも大丈夫?行事別の考え方
先負の日に結婚式やお祝い事を予定してよいのか、気になる人は多いものです。結論から言えば、午後を選べば多くの行事は問題ないと考えられています。
行事は当日だけで完結せず、前後に準備の締め切りが並びます。日をまたいで動かせない工程を先に置き、そのうえで当日の時刻を調整する順番になります。先負が候補に入っている日も、動かせない工程から順に押さえる形で組み立てます。
ここでは、よく相談される行事ごとに、先負との付き合い方を整理します。
結婚式・入籍/お祝い事
先負の日に結婚式や入籍をする場合は、午後の時間帯を選ぶのが基本とされています。午後は吉に転じるため、披露宴や入籍の届け出を午後にすれば、縁起の面でも安心しやすいでしょう。
また、先負は大安に比べて式場の予約が取りやすかったり、費用を抑えやすかったりする場合もあります。日柄を気にしすぎず、午後にうまく組むという考え方もあります。
挙式の開始が午前にかかるときは、披露宴の始まりを昼過ぎに設定し、主役が動く時間を後半へ寄せる組み方があります。会場の進行表は早い段階で固まるため、時刻の希望は最初の打ち合わせで伝えておくと通りやすくなります。
婚姻届は夜間や休日でも受け付ける窓口を置く自治体があり、提出の時刻は自分たちで選べます。先負の日に出すなら、昼を回ってから窓口へ持ち込むという決め方ができます。
入籍日は、物事を始める日として知られる一粒万倍日から選ぶ人もいます。一粒万倍日に向くとされる行動は、別の記事で詳しく扱っています。


引っ越し・納車・お参り・葬式
引っ越しや納車、新しいものを使い始めるといった行動も、午後に行えば先負の考え方の上では問題ないとされています。お参りやお祝い事も同様で、午後に予定すると無難です。
引っ越しは、作業の開始時刻ではなく荷物を運び入れる時刻で考える手もあります。午前に積み込み、新居での搬入が午後になる流れなら、時間帯の面でも折り合いがつきます。
納車は、店舗へ受け取りに行く時刻を午後で指定できるかどうかを早めに確かめておくと確実です。土日は枠が埋まりやすく、希望の時刻が残っていないこともあります。
寅の日は十二支をもとに十二日ごとにめぐる日で、引っ越しや開業の日取りでも名前が挙がります。寅の日の日付一覧と過ごし方は、こちらの記事に載せています。


なお、葬式などの弔事は六曜とは本来関係がなく、先負の日に行っても差し支えないとされています。六曜で気にされやすいのは「友引」であり、先負は弔事を避ける日には当たりません。
六曜のなかでの先負の位置づけ
先負は、六曜という6種類の暦注のひとつにすぎません。全体の流れのなかで先負がどこに位置するのかを知ると、意味がより理解しやすくなります。
六曜は基本的に決まった順番で巡っていきます。それぞれの吉凶を簡単に押さえておきましょう。
日取りの相談では、六曜の名前がそのまま条件として出てくることがあります。引っ越しの見積書や法要の案内に日柄が併記されていると、先負の日をどう扱うかをその場で決めることになります。相手が六曜を前提に話を進める場面では、六種類の違いを手早く確認できるかどうかが効いてきます。
六種類を並べて比べると、先負より条件のよい日が近くにあるかどうかも見えてきます。候補日をいくつか出す場面では、この見比べが判断の近道になります。
先勝・友引・先負・仏滅・大安・赤口の順番
六曜は「先勝→友引→先負→仏滅→大安→赤口」の順で繰り返されるのが基本です。先負は、先勝と友引の次に巡ってくる日にあたります。
| 六曜 | 読み方 | 主な意味 |
|---|---|---|
| 先勝 | せんしょう | 午前が吉。早く動くとよい |
| 友引 | ともびき | 朝晩が吉。弔事は避けられやすい |
| 先負 | せんぶ | 午前が凶・午後が吉。急がず控えめに |
| 仏滅 | ぶつめつ | 終日凶とされる日 |
| 大安 | たいあん | 終日吉。何事にもよい日 |
| 赤口 | しゃっこう | 正午前後のみ吉。注意が必要な日 |
六曜それぞれの意味や順番、カレンダーに載っている理由をもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。


先負に関するよくある質問
- 先負の午後に一粒万倍日や天赦日が重なる日は、どう使えばよいですか?
-
一粒万倍日や天赦日は日を単位に見る暦注で、時間帯で吉凶を分ける扱いは一般的ではありません。先負の午前が気になるなら、予定を昼過ぎに寄せれば両方の考え方に沿えます。財布を使い始める、口座を開くといった自分だけで完結する用事なら、時刻をずらすだけで対応できます。
- 先負の日に通夜や葬儀、法事を行っても差し支えありませんか?
-
弔事と六曜はもともと別の系統のもので、先負が弔事を避ける日として扱われることはほとんどありません。日取りで気にされやすいのは友引のほうで、地域の慣習によっては日程が動くことがあります。法事も同じで、参列者が集まりやすい日を優先して決める例が多く見られます。
- 「先負け」「せんまけ」と書かれているのを見かけます。表記はどれに合わせればよいですか?
-
暦やカレンダーの表記は「先負」の二文字が基本で、送り仮名を付けた「先負け」はあまり使われません。案内文や式場とのやり取りで書くときは「先負」にそろえておくと、読み違えられる心配が減ります。口頭で通じにくいときは、六曜の名前であることを添えると伝わります。
- 先負の日に届くよう贈り物や祝電を手配するのは避けたほうがよいですか?
-
届く日の六曜まで合わせる決まりはなく、先負を理由に日をずらす人はまれです。気になる場合は、配達の時間帯を午後で指定できるかを確認する方法があります。祝電は式の進行に合わせて読まれるため、届く時刻より会場の受付締め切りに間に合うかを優先すると失敗がありません。
- 先負は一か月に何回くらいめぐってきますか?
-
六曜は六日でひと回りするため、単純に割ると一か月におよそ五回めぐる計算になります。ただし月によって回数は前後し、毎月きっちり同じ数になるわけではありません。特定の月に何日あるかを知りたいときは、六曜が印刷されたカレンダーで数えるのが確実です。
まとめ|先負は「午後に落ち着いて動く日」
先負は六曜のひとつで、「先んずれば負ける=急ぐと良くない」という意味を持つ日です。読み方は「せんぶ」が一般的ですが、「せんまけ」「さきまけ」と読まれることもあります。
時間帯では午前が凶・午後が吉とされ、お祝い事や新しい行動は午後に行えば縁起の面でも安心です。勝負事や急ぎの契約は控えめにするとよい、という程度に押さえておけば十分でしょう。
先負のポイント
- 読み方は「せんぶ」が一般的
- 意味は「先んずれば負ける」=急がず控えめに
- 午前は凶・午後は吉。動くなら午後に
- 吉に変わる境目は正午とする説と午後2時とする説がある
- 契約や手続きは署名や受け渡しの時刻だけ午後に寄せる手もある
- 弔事は六曜と無関係で先負でも問題なし
日を選び直せる予定なら、吉日と呼ばれる日から候補を拾う方法もあります。年に数回しかめぐらない天赦日は、その代表格です。
天赦日がいつめぐるかは、この記事で一覧にしています。


先負は決して怖い日ではありません。「午後に落ち着いて動けばよい日」と覚えておけば、カレンダーで見かけても迷わずに過ごせますよ。





















