お正月になると耳にする「初夢」という言葉。なんとなく縁起が良さそうなイメージはあるものの、いつ見た夢を初夢と呼ぶのか、はっきり答えられる人は意外と少ないものです。
じつは初夢が指す日付には3つの説があり、地域や時代によって考え方が違います。さらに「一富士二鷹三茄子」には続きがあり、悪い夢を見たときの古くからのおまじないも伝わっています。
この記事では、初夢の基本の意味から、いつ見る夢か、縁起のいい夢の一覧、悪夢を見たときの対処法まで、まとめてわかりやすく紹介します。
- 初夢の意味と由来
- 初夢はいつ見る夢か(3つの説)
- 「一富士二鷹三茄子」の意味と続き
- 縁起のいい夢・悪い夢を見たときの対処法
初夢とは?まずは基本の意味をチェック
初夢とは、新年のある夜に見る夢のことで、その内容で1年の吉凶を占う日本の伝統的な風習です。古くから「最初に見る夢が良ければ1年が幸せに過ごせる」と信じられてきました。

初夢の定義|新年最初に見る夢で1年を占う風習
初夢は、その年最初に見た夢を通して1年の運勢を占うものです。特に「一富士二鷹三茄子」のような縁起の良いモチーフが夢に出てくると、その年は良いことが起こるとされてきました。
古い時代には、夢は神仏からのお告げや未来を知らせるものと考えられていました。そのため、新年の最初の夢には特別な意味があると大切にされてきたのです。
初夢の歴史|鎌倉時代『山家集』が文献上の初出
初夢という言葉が文献に登場する最も古い例は、鎌倉時代の歌集『山家集(さんかしゅう)』とされています。『山家集』は西行法師の和歌集で、春の歌の中に「初夢」が詠み込まれていることから、当時すでに新年の夢を特別視する文化があったことがうかがえます。
夢占いそのものは中国から伝わったとされ、古くから日本でも吉凶判断の手段として親しまれてきました。室町時代には宝船の絵を枕の下に敷くおまじないが広まり、江戸時代には庶民の間にも初夢の風習が定着していきます。
初夢はいつ見る夢?3つの説をわかりやすく整理
初夢を「いつ見る夢」とするかには、大きく分けて3つの説があります。現在では「元日の夜から1月2日の朝にかけて見た夢」とする考え方が主流ですが、地域や家庭によって受け取り方は異なります。

「いつだったか覚えてない」という人も多いですが、その年の最初に見た夢を初夢と考えれば大丈夫ですよ。
| 説 | 初夢を見る日時 | 特徴 |
|---|---|---|
| 説① | 大晦日の夜〜元日の朝 | 年が明ける瞬間に見る夢を重視 |
| 説② | 元日の夜〜1月2日の朝 | 現在最も一般的な考え方 |
| 説③ | 1月2日の夜〜1月3日の朝 | 「書き初め」など2日始まりの行事に合わせた説 |
説①:大晦日の夜から元日の朝
もっとも素朴な考え方が、大晦日の夜から元日の朝にかけて見る夢を初夢とする説です。年が変わる瞬間をまたいで見る夢を、新年最初の夢として大切にする発想です。
ただし、大晦日の夜は除夜の鐘や年越しの行事で起きていることが多く、そもそも夢を見るほど眠らない人も少なくありません。そのため次第に、元日の夜以降を初夢とする考え方が広まっていきました。
説②:元日の夜から1月2日の朝(現在の主流)
現在もっとも一般的なのが、元日の夜から1月2日の朝にかけて見る夢を初夢とする説です。江戸時代の中頃から広まり、辞書や事典でもこの説が採用されることが多くなっています。
元日の昼間は初詣や年始の挨拶で慌ただしく、夜にようやく落ち着いて眠る人が多いものです。「新年を迎えて初めてしっかり眠った夜の夢」を初夢とする考え方は、生活の実感に合っているといえます。
説③:1月2日の夜から3日の朝
もう一つの説が、1月2日の夜から3日の朝にかけて見る夢を初夢とするものです。この考え方は、1月2日に「書き初め」「初荷」「初風呂」など、その年最初の行事を行う風習と関係しています。
「初」のつく行事を2日にまとめて行う流れの中で、夢も2日の夜のものを初夢とした、というわけです。
なぜ複数の説があるのか|江戸時代の暦の変遷
3つの説が生まれた背景には、暦の変化と生活習慣の変遷があります。江戸時代以前は節分(旧暦の大晦日にあたる日)の夜に見る夢を初夢としていた時期もあり、新年の区切りそのものが現在と違っていたのです。
明治以降、新暦に統一されてからも複数の説がそのまま残り、現在に至っています。どれが正解というわけではなく、お住まいの地域や家庭で大切にされてきた考え方に従えば問題ありません。


縁起のいい初夢「一富士二鷹三茄子」の意味と由来
初夢で見ると縁起が良いとされる代表的な3つが「一富士二鷹三茄子(いちふじ にたか さんなすび)」です。それぞれに込められた意味と、なぜこの3つが選ばれたのかには諸説あります。


それぞれの縁起の意味(富士・鷹・茄子)
3つのモチーフには、それぞれ次のような縁起の良い意味が込められています。
- 一富士:日本一高い山であることから「立身出世」「運気の上昇」。「富士」と「無事」の語呂合わせで、安泰や安全を願う意味も
- 二鷹:高く力強く飛ぶ姿から「目標達成」「夢を高くつかみ取る」象徴。「鷹」と「高い」の語呂合わせ
- 三茄子:「成す」という言葉とかけて「子孫を成す」「財を成す」「物事を成し遂げる」
どれも前向きで縁起のよい意味を持っており、夢に出てくると1年の幸運が期待できると考えられてきました。
由来の3つの説(駿河国名物説・徳川家康説・言葉遊び説)
「一富士二鷹三茄子」という組み合わせがなぜ縁起物になったのかには、主に3つの説があります。
- 駿河国(するがのくに)名物説:富士山・愛鷹山(あしたかやま)の鷹・折戸茄子という、駿河国(現在の静岡県)の名物を並べた説
- 徳川家康説:家康が晩年に駿府城で暮らし、富士山・鷹狩り・初茄子をことのほか好んだことに由来するという説
- 言葉遊び説:「富士=無事」「鷹=高い」「茄子=成す」という縁起の良い語呂合わせから生まれたという説
どの説が正しいかははっきり決着していませんが、いずれも江戸時代に広まったとされています。複数の意味が重なり合って、縁起物として定着していったと考えるのが自然でしょう。
続きがある?「四扇五煙草六座頭」の意味
あまり知られていませんが、じつは「一富士二鷹三茄子」には続きがあります。「四扇(しおうぎ)五煙草(ごたばこ)六座頭(ろくざとう)」と続き、それぞれに縁起の良い意味が込められています。
| 順番 | モチーフ | 縁起の意味 |
|---|---|---|
| 四 | 扇(おうぎ) | 末広がりの形から「子孫繁栄」「商売繁盛」 |
| 五 | 煙草(たばこ) | 煙が天に昇る様子から「運気上昇」 |
| 六 | 座頭(ざとう) | 剃髪した姿から「毛がない=怪我ない」で家内安全 |
富士・鷹・茄子と扇・煙草・座頭は、それぞれ「高いもの」「強いもの」「末広がりや無病息災」など対応関係があるとも言われています。富士山と扇は形が末広がりで似ており、鷹と煙草は上昇のイメージ、茄子と座頭は「成す/怪我ない」の語呂合わせという見方です。
一富士二鷹三茄子以外の縁起のいい夢一覧
「一富士二鷹三茄子」以外にも、初夢に出てくると縁起がいいとされるモチーフはたくさんあります。古くから親しまれてきた代表的な吉夢を一覧で紹介します。
| 夢に出るもの | 意味 |
|---|---|
| 蛇(特に白蛇) | 金運アップ・財運 |
| 太陽・朝日 | 新しい始まり・成功 |
| 虹 | 願いが叶う・幸運の前触れ |
| 七福神・宝船 | 福が訪れる・開運 |
| 火事・燃える炎 | 運気の急上昇 |
| 富や宝物を得る | 金運・物質的な豊かさ |
| 空を飛ぶ | 自由・目標達成 |
開運につながる吉夢の例(蛇・太陽・虹など)
蛇の夢、特に白蛇は古くから金運や財運を象徴するとされ、初夢で見ると一年お金に困らないという言い伝えがあります。太陽や朝日が昇る夢は、新しい始まりや成功を示す吉夢の代表格です。
虹を見る夢は願いが叶う前触れ、七福神や宝船の夢は福が訪れる兆しとされ、いずれも縁起のよい初夢として親しまれています。
逆夢(悪い夢が良い知らせ)の考え方
夢占いには「逆夢(さかゆめ)」という考え方があり、悪い内容の夢が反対に良い知らせを意味するとされる場合もあります。たとえば「死ぬ夢」は再生や生まれ変わりを表し、「泣く夢」はストレス発散や運気のリセットと解釈されることがあります。



怖い夢を見ても落ち込まず、「逆夢かも」と前向きに受け止めるのも昔ながらの知恵ですね。
悪い初夢を見たときの対処法
もし初夢で悪い夢を見てしまっても、心配する必要はありません。古くから日本には、悪夢を払い、良い運気を呼び込むためのおまじないがいくつも伝わっています。


「獏にあげます」と3回唱える
もっとも有名なのが、夢を食べるとされる伝説の生き物「獏(ばく)」に夢を食べてもらう方法です。朝起きたら「ゆうべの夢は獏にあげます」と3回唱えると、悪い夢の意味が消えるとされています。
獏は中国から伝わった想像上の動物で、クマの体・ゾウの鼻・サイの目・ウシの尾・トラの脚を持つとされる聖獣です。実在する哺乳類のバクとは別の存在で、悪夢を食べてくれるありがたい存在として古くから親しまれてきました。
宝船の絵に託して水に流す
もう一つの方法が、宝船の絵に悪夢を託して水に流すというおまじないです。悪い夢を見た朝、宝船の絵を川や水に流すことで、夢の凶意も一緒に流れていくと考えられてきました。
現代では川に流すのは難しいため、宝船の絵を破って捨てる、お焚き上げに出すなどの形で対応する方もいます。
回文の歌「なかきよの〜」を枕の下に
室町時代から伝わる風習として、七福神の宝船の絵に回文の歌を書き、枕の下に敷いて眠る方法があります。回文は次の歌です。
なかきよの とおのねふりの みなめさめ なみのりふねの おとのよきかな
(長き世の 遠の眠りの 皆目覚め 波乗り船の 音の良きかな)
上から読んでも下から読んでも同じ音になる回文で、「長い夜の深い眠りから皆が目覚め、波に乗る船の音が心地よい」という意味が込められています。縁起の良い言葉を声に出して読むだけでも、気持ちが前向きになるおまじないです。
いい初夢を見るためのコツ
せっかくなら、新年の最初に縁起のいい夢を見たいもの。古くから伝わる「いい初夢を見るためのコツ」を紹介します。
七福神の宝船の絵を枕の下に敷く
もっとも伝統的な方法が、七福神が乗った宝船の絵を枕の下に敷いて眠ることです。宝船には恵比寿・大黒天・毘沙門天など七福神が乗っており、福を呼び込むモチーフとして古くから親しまれてきました。
絵の裏に獏を描いておくと、悪い夢を食べてもらえてさらに安心とも言われます。神社や寺で授与品として宝船の絵を扱っているところもあるので、お正月の参拝時にチェックしてみるのもおすすめです。
寝る前に「いい夢が見られますように」と意識する
科学的にも、寝る直前に考えていたことが夢に影響しやすいことがわかっています。寝る前に「富士山を見たい」「いい夢を見たい」と意識するだけでも、夢の内容に変化が出ることがあります。



難しいおまじないが面倒でも、寝る前に少し意識するだけでも気分が変わりますよ。
初夢に関するよくある質問
- 初夢を覚えていなかった場合はどうなりますか?
-
縁起や運勢に悪影響はありません。夢を覚えていないこと自体は普通のことで、心配する必要はありません。「その年最初に思い出せた夢」を初夢と捉える考え方もあります。
- 昼寝で見た夢も初夢に含まれますか?
-
一般的には夜に見た夢を初夢とすることが多いですが、明確なルールはありません。元日や2日の昼寝で印象的な夢を見たなら、それを初夢と捉えても問題ないとされています。
- 初夢で見た縁起のいい夢の効果はいつまで続きますか?
-
一般的には1年間とされています。あくまで風習や言い伝えなので「1年を前向きな気持ちで過ごすきっかけ」と捉えるのがおすすめです。
- 一富士二鷹三茄子の3つすべてが夢に出ないとダメですか?
-
3つすべてが揃わなくても大丈夫です。富士山・鷹・茄子のどれか1つでも夢に出てきたら、縁起のよい初夢として喜んで良いとされています。
まとめ|初夢を楽しんで新年の運気を上げよう
初夢は、新年最初に見る夢でその年の吉凶を占う、日本の古くからの風習です。最後にこの記事のポイントをまとめておきます。
- 初夢は新年最初の夢で1年の運勢を占う風習
- 「いつ見る夢か」は3説あり、現在は元日の夜〜2日朝が主流
- 縁起の良い夢の代表は「一富士二鷹三茄子」
- 続きは「四扇五煙草六座頭」
- 悪い夢は「獏にあげます」と3回唱えるおまじないがある
- 宝船の絵と回文を枕の下に敷くと良い夢が見られるとされる
どの夢を見ても、結局は「新年を前向きな気持ちでスタートするためのきっかけ」と捉えるのが、初夢の本当の楽しみ方かもしれません。今年の初夢で、ぜひ縁起のいいモチーフに出会えますように。























