秋刀魚の漢字の由来|なぜ魚へんじゃない?語源も解説

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目次

秋刀魚の漢字の読み方と意味

「秋刀魚」と書いて「さんま」と読みます。秋の食卓でおなじみの魚ですが、漢字をあらためて見ると少し不思議に感じる方も多いのではないでしょうか。

「秋刀魚」は何と読む?

読み方はそのまま「さんま」です。音読みや訓読みを組み合わせた読み方ではなく、三文字まとめて「さんま」と読む熟字訓(じゅくじくん)にあたります。「大人(おとな)」や「昨日(きのう)」と同じように、漢字の並びに対して日本独自の読みを当てたものです。

秋+刀+魚──三文字に込められた意味

秋刀魚の漢字には、この魚の特徴がそのまま表れています。

  • ……旬の季節。サンマがもっとも脂がのる時期
  • ……細長く銀色に光る体が、日本刀のような姿をしている
  • ……文字どおり魚であること

つまり「秋にとれる刀のような魚」──漢字を見るだけで季節感と見た目が伝わる、とてもわかりやすい表記といえます。

秋刀魚のように、漢字の意味をそのまま絵のように組み合わせた当て字は、日本語ならではの表現です。

銀色に光るサンマの姿

秋刀魚の漢字の由来──いつ・誰が広めた?

現在の「秋刀魚」という表記が定着したのは、じつは大正時代以降のことです。それ以前はさまざまな漢字が使われていました。

江戸時代までの表記バリエーション

江戸時代から明治にかけて、サンマにはいくつもの書き方がありました。

表記読み方由来・備考
三馬さんま夏目漱石が使用した当て字
青串魚さんま青い体を串に刺して焼く様子から
青光魚さんま青く光る外見に由来
さんま本来はコノシロの字。江戸の市場で転用

このように統一された表記がなく、書き手によってバラバラだったのが実情です。

佐藤春夫『秋刀魚の歌』で定着した経緯

「秋刀魚」の表記が広まるきっかけとなったのが、大正10年(1921年)に発表された佐藤春夫の詩『秋刀魚の歌』です。「あはれ秋風よ 情あらば伝へてよ」で始まるこの詩は多くの人に親しまれ、「秋刀魚」という字も自然と世間に浸透していきました。

それまで複数あった表記が、文学作品をきっかけに一つにまとまったというのは、日本語の歴史のなかでも興味深いエピソードですね。

「秋刀魚」の表記は大正時代に詩人・佐藤春夫の作品を通じて広まり、現在の定番表記として定着しました。

「サンマ」の名前の語源は?

漢字だけでなく、「サンマ」という呼び名そのものの語源にも複数の説があります。どちらも有力とされており、現在も定説は確定していません。

「狭真魚(さまな)」説

昔の日本では、魚のことを「真魚(まな)」と呼んでいました。サンマは体が細長いことから「狭い真魚」→「狭真魚(さまな)」と呼ばれ、それが変化して「さんま」になったとする説です。

「まな板」の「まな」も魚を意味する言葉で、同じ語源にあたります。

「沢魚(さわまな)」説

もう一つの有力な説は、サンマの群れの大きさに注目したものです。サンマは大群をなして回遊する習性があり、「たくさん」を意味する「沢(さわ)」と「魚(まな)」を合わせた「さわまな」が「さんま」に変わったとされています。

語源のまとめ

(1) 狭真魚説……体の細さに由来
(2) 沢魚説……群れの大きさに由来
どちらも根拠があり、現時点で定説は決まっていません。

秋刀魚に魚へん一文字の漢字はある?

マグロは「鮪」、サバは「鯖」、イワシは「鰯」──多くの魚には魚へんの漢字が一文字で用意されています。では秋刀魚にも一文字の漢字はあるのでしょうか。

「鰶」(魚へんに祭)は本来コノシロの字

サンマを表す漢字として「鰶」が使われることがあります。しかしこの字は、もともと中国でニシン科の魚「コノシロ」を指す漢字です。

江戸時代、サンマが河岸(市場)に揚がるとお祭り騒ぎになったことから、「祭」の字が入った「鰶」をサンマにも当てるようになったといわれています。ただし本来の意味が異なるため、正式な表記とはいえません。

なぜサンマには専用の漢字がないのか

魚へんの漢字の多くは中国で作られた漢字か、日本で作られた国字(和製漢字)です。サンマに専用の一文字がない理由としては、次のような背景があります。

  • 中国にはサンマを食べる文化がほとんどなく、漢字が作られなかった
  • 日本でも庶民の魚として軽く扱われ、わざわざ国字を作る対象にならなかった
  • 江戸時代には複数の当て字が併存しており、統一の機運が生まれなかった

サンマが食用として本格的に普及したのは江戸中期以降とされます。タイやアユのように古くから珍重された魚と比べると、漢字の歴史が浅いことも関係しています。

魚へんの漢字いろいろ(鮪・鯖・鰯など)

秋の魚の漢字一覧──鮭・鰯・鯖との違い

秋が旬の魚には、それぞれ個性的な漢字がつけられています。秋刀魚と比べてみると、漢字の成り立ちの違いがよくわかります。

秋が旬の魚と漢字の成り立ち

魚名漢字文字数漢字の由来
サンマ秋刀魚三文字秋にとれる刀のような魚
サケ一文字魚へん+「圭」(形声文字。諸説あり)
イワシ一文字魚へん+「弱」(傷みやすい弱い魚)
サバ一文字魚へん+「青」(背が青い魚)
カツオ一文字魚へん+「堅」(干すと堅くなる)

秋刀魚だけ三文字になった理由

上の表を見ると、多くの魚は魚へんに一文字の意味を加えて漢字が作られています。一方、秋刀魚は既存の漢字を組み合わせた「当て字」であり、漢字としての成り立ちがまったく異なります。

背景には、先ほど説明したように中国でサンマの漢字が作られなかったことと、日本での国字化が進まなかったことがあります。そのため「秋の刀の魚」というわかりやすい日本語表現がそのまま漢字表記として残ったのです。

秋刀魚が三文字なのは、専用の魚へん漢字が存在しないため。中国に食文化がなく漢字が作られず、日本でも当て字が定着した結果です。

まとめ

秋刀魚の漢字の由来と語源について、ポイントを整理します。

この記事のまとめ
  • 「秋刀魚」は「秋にとれる刀のような魚」という意味の当て字
  • 大正時代に佐藤春夫の詩『秋刀魚の歌』をきっかけに定着した
  • 「サンマ」の語源は「狭真魚(さまな)」説と「沢魚(さわまな)」説の二つが有力
  • 魚へん一文字の漢字がないのは、中国にサンマの食文化がなかったため
  • 「鰶」はコノシロの漢字であり、サンマの正式な表記ではない

ふだん何気なく目にしている「秋刀魚」の三文字には、季節感や魚の姿かたち、そして日本の食文化の歴史がぎゅっと詰まっています。秋にサンマを食べるときには、ぜひ漢字の由来も思い出してみてください。

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